【ロンボク地震1年】地震に耐えたバンガロー 宿経営の服部さん ギリ島で再出発
昨年8月のロンボク島地震では、同島北西沖にあるビーチリゾートのギリ3島も被災した。島の観光は打撃を受け、宿泊施設を経営する服部良太さん(46)も休業していたが、6月に仕事を再開。強度にこだわって作ったバンガローは3度の大地震にも耐え、「安心して泊まっていただける」と話している。
服部さんの宿「オールドビレッジ」があるのは3島のうち最もロンボク島に近いギリアイル島。3日に訪れると、ビーチは欧米人観光客でにぎわい、地震前の活気を取り戻しているかのように見えた。だが服部さんは「まだ去年の6~7割くらいしかお客さんは戻っていない」と話す。
7~8月は旅行のハイシーズン。例年なら満室が続くが、ことしは予約が埋まらず、どこも値段を下げざるを得ないという。服部さんも宿泊料金を昨年と比べ3~4割引き下げており、「この状況が続くと厳しい」とこぼす。
ギリ3島はバリ島からも近く欧米人に人気の離島。服部さんはバックパッカーとして訪れたギリアイル島に魅せられ、2015年にバンガロー式の宿をオープンさせた。
昨年8月5日夜、宿の中庭で地震に遭った。宿泊客13人を急いで部屋から避難させ、皆で中庭で固まって不安な一夜を過ごした。
樹齢80~100年のヤシの木などを使用し、頑丈さを重視したバンガローは大地震にも耐えた。だが島では激しい揺れに多くの建物が壊れ、死者も出た。翌朝には観光客も従業員も、一斉に島を脱出した。
「まだ地震の恐怖が強い」と服部さんは言う。この1年、「再び大地震が来るらしい」といったデマもたびたび流れ、島で働く人々がロンボク島へ逃げ出したことも何度かあったという。
地震の翌日、ボートでロンボク島に渡った服部さんは、北ロンボク県タンジュンのテントで避難生活を送った後、日本へ帰国。休業を経て3月に島へと戻り、再出発に向けて準備してきた。
地震から1年がたち、島では多くの施設が営業を再開、シュノーケリングなど従来通りの観光も楽しめるようになった。
ギリ3島でホテルやビラなどを経営する外国人を中心に約100社の顧客を持つコンサルタントのリリー・ヒダヤティさん(36)によれば、顧客の7割がこれまでに営業を再開。建設作業員の人手が不足し、再建に時間がかかっているところもあるが、経営者の多くは服部さんのようにあきらめずに事業を続け、復興を後押ししている。
「去年と全然値段が違うけれど、きょうは6室が全て埋まった。明日はリピーターのお客さんが来るんです」と服部さん。地震に耐えたバンガローで、少しずつ復興へと歩んでいる。(木村綾、写真も)