「宗教令が事件原因」 シーア派団体が記者会見 イスラム指導者会議を批判
「ファトワ(宗教令)が最大要因」―。東ジャワ州マドゥラ島サンパン県で発生したイスラム・シーア派信者殺害事件について、シーア派団体「アフルル・バイト・インドネシア(ABI)」は31日、イスラム団体を統括するイスラム指導者会議(MUI)がシーア派を「異端」とする宗教令を発令し、地元住民の襲撃を引き起こしたと非難した。(上松亮介、写真も)
中央ジャカルタ・ガンビルの報道理事会事務局で開いた記者会見で、ABIのアフマッド・ヒダヤット代表は、MUI東ジャワ州支部が今年1月、シーア派をイスラム異端派とするファトワを発令し、サンパンのシーア派に対する差別を助長したと指摘した。
一方で、イスラム強硬派のオンライン・メディアが、ファトワに関する報道を続け、イスラム・スンニ派のシーア派に対する敵意をあおったという。また、一部のメディアが、地元スンニ派とシーア派の「衝突」と報じているのに対し、衝突ではなく、シーア派に対する「襲撃」とした。
一方、事件後、政府がシーア派に提示した他地域への移住による解決策に対しては「サンパンで生まれ、サンパンで育った。なぜ退去しなくていけないのか」と反発した。
■目の前で父親殺される
記者会見には、父ハママさん(50)を暴徒に殺されたムハイミンさん(17)、父ムハマド・トヒルさん(45)が重傷を負わされたザイニさん(22)の被害者遺族2人が出席した。目の前で父親を殺された家族は涙ぐみながらも、取り囲む報道陣の質問に答えた。
ムハイミンさんは、26日午前8時ごろ、中部ジャワ州のイスラム寄宿学校に友人約20人と向かおうとしたところ、地元住民が妨害・脅迫した。地元シーア派指導者の自宅に避難したが、地元住民らに追われた。
午前10時ごろ、住民らによる脅迫行為を聞きつけ、ムハイミンさんの元に向かった父、ハママさんは住民6、7人と口論になり、横腹などを刺されたという。約3分間の出来事で、ハママさんはその場に倒れこんだ。
またザイニさんは、事件当時、父トヒルさんが「落ち着いてくれ。同じムスリムなのに、こんなこと止めてくれ」と嘆願するにもかかわらず、住民らはトヒルさんに投石した上、刃物で腹を刺したと証言。また現場に警察官がいたが、制止することもなく傍観していたと訴えた。