「ここで死にたいか?」 都心、23日未明も衝突 警官暴徒化、記者殴る

 「バチン、バチン」、警察隊が捕らえた「暴徒」のシャツを脱がせ、囲んで棒で何度も殴りつける。耳をつんざくような打撃音が止んだとき、捕らえられた男性は頭から血を流し、道路にぐったりと横たわっていた。現場の写真を撮影した記者もまた警官に囲まれ、棒で殴られた後、「ここで死にたいか?」と怒声を浴びせられた。中央ジャカルタの総選挙監督庁とサリナデパートの周辺で22日深夜から翌未明、大統領選の結果発表をめぐる抗議デモ参加者と治安部隊の衝突を追った。  

 午後11時半ごろ、サリナデパート脇のワヒッドワシム通りに陣取るデモ隊と、タムリン通りに陣取る警官隊とが相対し、放水や催涙弾と、石、打ち上げ花火の応酬を繰り広げた。サリナデパート横のマクドナルドの窓が割れ、オートバイから火の手が上がる。ジャカルタ中心部の景色は平時から一転した。
 午後11時40分ごろ、警察の別働隊がサリナデパート敷地内を通り、側面からデモ隊に突撃を仕掛けた。呼応するように本隊も前進し、デモ隊を東に押し込む。道路脇の建物の中にいたデモ参加者が逃げ場を失い、捕らえられた。
 捕らえられたデモ参加者の男性は警官に連れられ、上半身裸で両手を上げながら道路に出てきた。警官に囲まれ、膝をついて座らされる。直後、警官が長さ1メートルほどの棒で背中に一撃。せきを切ったように他の警官も棒で男性を殴り始める。2分ほど殴打が続けられた後、警官の一人が止めた。道路脇にぐったりと横たわった男性の上には、隠すように警官隊の盾が載せられた。
 最初に襲い掛かった警官はまだ殴り足りないのか、近くにあったオートバイに棒をたたきつける。
 その後複数の男性が同様に囲まれ、殴打された。うち一人は頭から激しく血を流しているのが見えた。「拘束され無抵抗の男性にやりすぎではないのか」。そう思った記者が数回シャッターを切ると、「写真を撮るな!」と、血のついた白いポロシャツを着た男がこちらに向かってきた。
 国家警察所属と語るこの男は、写真を消去するよう言ってきた。拒否して押し問答を続けているうちに、周りを男の仲間に囲まれた。血走った目をした白髪混じりの男に「ここで死にたいか?」と怒声を浴びせられた。直後、突然後頭部を棒で殴られ、ひるんだ隙に男たちがカメラを奪いにきた。カメラを必死に抱えると「こいつ中国人か韓国人だ。やめとけ」という声が聞こえ、攻撃は止んだ。
 リーダー格とみられる長身の男は記者に写真の削除を改めて迫ってきた。止むを得ず、写真の一部を削除、その場から立ち去った。外国人であることを理由に攻撃が止まっていなかったらどうなっていたのか、想像すると身震いする。地元メディアの記者は写真を撮らず、距離を保って「制圧」の現場を見つめていた。(大野航太郎、写真も)

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