インフラ計画前倒し 行政サービス刷新を 就任100日プログラム すべてスピードアップ ジョコ・ウィドド(ジョコウィ) 次期ジャカルタ特別州知事

 行政の制度改革を通じた「新しいジャカルタ」づくりを掲げ、20日のジャカルタ特別州知事選挙決選投票で当選し、来月7日に就任する見込みのジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)中部ジャワ州スラカルタ(ソロ)市長(51)は27日、ソロの公邸でじゃかるた新聞の会見に応じた。地方の首長から、わずか半年で知名度を急上昇させ、当選を果たしたジョコウィ氏は、就任後100日に取り組む施策として、医療と教育の無償サービスの実現を挙げたほか、同時に各種インフラ事業も実行時期を前倒しするなど、全分野でスピードアップを図る方針を示した。(中部ジャワ州ソロで配島克彦、写真も)

■保健と教育を優先
 ―知事選は決選投票にもつれ込み、宗教や民族を問題視したネガティブキャンペーンが展開された。
 ◆ジョコウィ氏 私はソロの市長選に続き、地方首長選に出馬するのは3回目。確かにネガティブキャンペーンは非常に重荷に感じたが、政治とはそのようなものでもあるのだろう。(宗教差別発言の歌手に反撃するために)ダンドゥットの歌詞を必死に覚えたりもしたが(笑)。しかし戦いはもう終わった。ジャカルタ市民が一つになって前進する時が来た。
 ―就任後100日の施策は。
 ◆最初の3カ月は昼夜問わず全力で仕事に取りかかる覚悟だ。まずは保健と教育。この二つを優先する。健康な生活環境とはどのようなものか。東ジャカルタのブキットドゥリなど、三、四つのカンプン(下町)を取り上げ、都市整備の模範を示す。
 低所得者層でも無償で医療や教育を受けられる保健カード、教育カードを配布し、改善された公共サービスを実感してもらう。
 ―行政改革はどのように着手するか。
 ◆すべて新たなシステムを構築する必要があるが、まずクルラハン(村役場)のサービスを刷新する。住民登録証(KTP)や出生、婚姻届など諸手続きにかかる時間を短縮する。
 ソロには1人の市長だけだが、ジャカルタには5人も区長がいる。刷新したシステムに従って物事を進めるよう指示する。これができなければ、区長を辞めてもらう。ソロで町長を交代させたのと同じことをやっていく。
 いずれにせよ、3カ月で「今度の知事は違うぞ」と、市民が直接変化を感じ取れるようにすることが重要だ。
 ―2005年の就任当初、ソロでは行政改革に役人たちが猛反発したようだが。
 ◆ジャカルタでは当時のようなことは起こらないだろう。当時は実業家から転身して市長になったばかり。すべて新しい経験だったが、今はもう経験を積んでいる。良い方向に進めるための改革であることを説明すれば、理解してもらえるはずだ。
 ―深刻化する渋滞にはどう対処するか。
 ◆フィーダー線を拡充する。コパジャ、メトロミニといった市内バスも取り込み、効率的に乗り換えできるようにする。老朽化した車体も変えるべきだ。
 トランス・ジャカルタは車両を大幅に増やす。具体的な台数は今後話し合っていくが、段階的かつ継続的に増やし、スムーズに運行できるようにする。
 モノレール建設事業はまず投資誘致から始めなければならないが、他の事業と同時に進展させていく。いずれの交通インフラ整備も民間企業との連携が必須だ。
 ―MRT(大量高速交通システム)事業は日本の円借款で建設される。
 ◆MRTは、なぜまだ建設が始まっていないのか。現時点の計画を前倒しして早急に進めるべきだ。進捗状況を明らかにし、事業に関する全過程の透明化を進めていくことで、完成時期を早めることはできるはずだ。
 これまで、さまざまな事業の計画や調査などは聞かされても、いつ実行されるのか半信半疑だった。いずれの施策もまず実行すること。行動を起こしてから継続して進捗状況を監視していけば、すべてスピードアップに結び付けられるはずだ。

 ―投資に対する優遇措置は。
 ◆まず投資の障害となっているものを見極める必要がある。よく許認可に関する行政改革として「ワンルーフ(ワンストップ)サービス」といった言葉が使われるが、名前だけで統合されておらず、サービスは旧態依然ということもある。名前だけでなく、迅速に対処できるようシステム全体を刷新する。これもすでにソロでやってきたことで、3カ月以内に着手する。
 投資はインフラ整備を中心に歓迎したいが、消費主義的な傾向には慎重に対処していく。ショッピングモールは飽和状態。127ものモールを抱える都市は世界でも他にないだろう。既存のモールも入居率の低いところもあり、需給のバランスを十分に考えていく必要がある。「カキリマ(露天商)にモールを」という公約も掲げたが、まだ投資が不十分な中間層・低所得者層向けに市場開発の可能性が秘められているということだ。
 ―斬新な施策を打ち出しても、いずれも州議会の同意が必要になる。支持政党の闘争民主党(PDIP)とグリンドラ党で94議席中17議席しかなく、議会運営の難航も予想されている。
 ◆議席数が限られているのは事実だが、議会に施策の理由を丁寧に説明していくことで理解を得られると思う。
 ―ゴルカル党との関係では、ユスフ・カラ前同党党首(元副大統領)が、最初にジャカルタ州知事選出馬を打診したそうだが。
 ◆出馬登録の締め切り2カ月前(今年1月)に、カラ氏が「ジョコウィ、ジャカルタの知事選に出ないか」と電話してきた。「私はソロの人間で、ジャカルタにはとても出られないですよ」と答えたが、カラ氏は「メガさん(PDIPのメガワティ党首)に私が話すから」と熱心に誘ってきた。ソロでの実績を高く評価していただいたようだが、非常に驚いた。
 その後、カラ氏と一緒にメガワティ氏に会いに行った。最終的にPDIPの候補として決まったのは登録締め切り直前だった。
 ―ジョコウィと呼ばれるようになったいきさつは。
 ◆20年ほど前、取り引きのあるフランスの家具業者から「インドネシアではジョコという名前はたくさんいて、よく間違える。これからはジョコウィさんと呼ばせてもらいます」と言われたのがきっかけ。ソロの家具業者だけで3人ほどジョコさんはいる。
 今では名刺も名札もジョコウィ。ジャワだけでなく、ジャカルタなど国内各地で他のジョコさんと区別してもらえるほか、語尾は中国人の「ウィ」さんのようにも聞こえる。どこでも親しまれやすい名前のようで気に入っている。

◇ジョコ・ウィドド(ジョコウィ)氏
 1961年ソロ生まれ。ガジャマダ大学(UGM)林業学部卒業後、ジャカルタやアチェでの製材会社勤務を経て、家業の家具業を継ぐ。輸出に注力し、欧州各地を訪れる。1990年代後半、東京で開かれた国際家具展示会に出展。2005年、闘争民主党(PDIP)支部長とペアを組み、ソロ市長に初当選。2010年には90.8%の記録的得票率で再選した。

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