【ミレニアル世代の有権者】(下)戸別訪問にアイドルソング ジョコウィ派の若者奔走

 「投票まで10日です」「ジョコウィにお願いします!」
 炎天下の土曜日。南ジャカルタ区マンパンの下町で若者たちが汗を流し声を張り上げていた。中心は20~30代の学生や社会人。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領を支持するミレニアル世代の団体「ジョコウィ・モーション」の活動で、浮動票に訴えかけるために毎週末、戸別訪問を行っている。
 民家や伝統市場を回り、ジョコウィ組の顔写真入りのTシャツや洗剤、公約をまとめたビラを配り歩く。「やめて」「いらない」と返されるのはしょっちゅう。プラボウォ組の支持が根強い地域では、ジョコウィ氏のステッカーを配ると「そんなものを貼ったら家が燃やされる」と断られたこともあった。政府機関の契約職員ヤシンタ・スカルワンギさん(22)は「ジョコウィは反イスラム、という誹謗中傷を信じ込み『洗脳』されている住民も多い」と話す。
 この日はデマ被害を払拭(ふっしょく)するためのビラも配った。「デマ:ジョコウィは反イスラム。事実:副大統領候補はイスラム指導者」「デマ:ジョコウィは中国系。事実:両親はムスリムでジャワ人」——庶民にも届くようシンプルな文章で伝える。
 「長期の選挙戦で、SNSに流れる話題はデマや中傷ばかり。ミレニアル世代はうんざりしている」とヤシンタさん。「汚職だらけの政治に興味を持てない同世代も多い」と言う。若者の政治離れや、棄権・白票増加の可能性を指摘する専門家も多い。
 そうした無関心の同世代にも支持を広げようと、メンバーは戸別訪問以外の選挙運動も展開してきた。2月には、西ジャワ州バンドン出身の女性グループ「JKM19」を結成しプロモーション動画をユーチューブへ投稿。AKB48にヒントを得たというアイドル調の曲で、「ジョコウィをもう一度」「リーダーは、気が若く全世代に理解がある方がいい」と歌っている。
 ロック音楽やオートバイなど、若者カルチャーも親しむジョコウィ氏のキャラクターも若者の支持と無関係でない。ジャケット姿で改造バイクを乗り回し、若手人気歌手のライサさんを大統領宮殿に招待、話題の「eスポーツ」やスタートアップ企業を支援するなど若者への話題を振りまいてきた。「若い世代を尊重してくれる」と評価する若年層の声も聞かれる。
 若い支持者はジョコウィ政権の仕事ぶりをどう見ているか。選対のミレニアルメンバーとして活動するガジャマダ大学院生のシャフリルさん(25)は、燃料や電気料金の値上げなどをジョコウィ政権へ抗議する学生デモにもたびたび参加してきたという。「だけど燃料価格の均一化やパプアの道路建設など、歴代政権がしてこなかったことに着実に取り組んでいる」と評価。「実績がない候補は選べない」と主張する。
 エリートでも軍人でもない「庶民派」「つつましい」大統領を好む層も健在だ。ジョコウィ・モーション代表のニク・スピットさん(29)は民放テレビの元リポーター。ジャカルタ特別州知事時代からジョコウィ氏を取材し、「庶民との対話を重視し、食事もろくに取らずに午前3時まで働く姿を見てきた」と言う。「ジョコウィ氏を再選させるために、今、ミレニアル世代が声を上げなくては」と話した。
    ◇  ◇
 話を聞いた若い有権者の多くは「5年前は選挙活動に積極的でなかった」と語っていた。存在感を示し始めた若者が今後どこまで政治を動かしていくのか、注目したい。(木村綾、写真も、おわり)

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