現地通貨建て決済促進 ドル変動リスク軽減へ イ・タイ間貿易
インドネシアとタイの中央銀行は、貿易において現地通貨建て決済を促進させていくことで一致した。通貨の対米ドル相場の変動幅が大きい中で、中銀はリスク分散の手段として必要性を強調する。ただ、長期的に取引額を伸ばしていくには、通貨の安定感や利便性を高める努力が必要だ。
ことし1~2月の現地通貨建て取引は前年同期比約4倍の1210億ルピアまで増えた。このほど実施された両国の中央銀行総裁会談の中で、より数字を伸ばしていくことで合意した。
取り組みは2017年12月、インドネシアとタイ、マレーシア3国の中央銀行間の枠組み合意に基づいている。3国間の輸出入のほとんどが米ドルによって決済されている中で、ドルへの依存を減らし、米国の経済政策に伴う対ドル相場の変動によるリスクを軽減。また、ドルを売買する手間をなくし効率的にすることを目的にしている。
各国の通貨決済の指定銀行同士で取り引きし、互いの国の通貨規制上の緩和措置を受けられるメリットがある。
取り組み初年となった18年のインドネシア・タイ間の現地通貨建て決済額は約5千万ドルだった。商業省によると、同年の両国間の貿易額は約177億ドル。ことし増加したとしても、全体の総量からすると微々たる数字だ。
ただ、東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の経済統合、決済手段の多角化という観点から見ると、長期的には効果が生まれると中銀は考えている。新興国通貨は一般的に対ドル相場の触れ幅が大きい。対してASEAN域内の通貨間の相場変動は小さい傾向にあり、各国通貨建て決済が進んでいくのは望ましい方向にある。
足下の自動車をはじめとする各種貿易がドル基軸で行われている状況に変化がない中、現地通貨決済を促進するには通貨の安定性や魅力を高めていくしかない。3国の金融セクターは、アジア通貨危機から20年以上の時を経てもまだ構造的に強い状況ではない。昨年のルピアの対ドル相場下落は記憶に新しい。
通貨安定の背景となる経常収支好転などの地盤が固まっていない中、投資家や企業の視線は厳しい。通貨の魅力をより高める努力が求められそうだ。(平野慧)