インドネシア人から基礎学ぶ 桃田賢斗さん 中高コーチ、イマムさんに

 バドミントンのダイハツ・インドネシア・マスターズ会場で、大きな歓声を浴びる日本の男子シングルス選手、桃田賢斗さん(24)。日本男子で初の世界ランク1位入り、世界選手権優勝などと快挙を続けており、人気はインドネシアでも高い。そんな桃田さんが「バドミントンの基礎をほとんど教えてもらった」と話すのが、中高時代のインドネシア人コーチ、イマム・トハリさん(41)だ。

 桃田さんは、福島県富岡町立富岡第一中学校、福島県立富岡高校の出身。当時、中高一貫のバドミントン強豪校で、中学2年から高校3年までイマムさんの指導を受けた。
 イマムさんが富岡でコーチをやると決めたのも、桃田さんの存在が大きかったという。1995年から2000年までインドネシア代表として活躍、混合ダブルスでは世界ランク4位までになった選手。00年からコーチとしてのキャリアを積み、富岡の前にも日本で指導をしていたイマムさんは「彼のプレーを見て、一緒にやってみたい、強くしたいと思った」と話す。「まだ子どもだったけれど、そのときからコートの中で見せる顔、特に目が他の子と違うと思った。感覚やセンスも他とは違った」と振り返る。
 桃田さんは、「練習のときはすごく厳しいが、オフのときにはすごく優しくて目つきも違う。やるときはやる、休むときは休むというメリハリ、オンとオフをそこでしっかり教わった」といい、技術面で教わったネット前プレーは「今でも自分の持ち味だと思っている。イマムさん直伝というか、彼から吸収したものかなと思います」と笑顔で話す。
 当時から「桃田は日本のバドミントンの歴史を変える男だ」と、周りの先生に話していたというイマムさん。中学校3年のときには、3年後にジュニアの世界一を決める世界ジュニア選手権が千葉県で開催されることが決まっていたため、そこで優勝しようと話したという。中学3年、高校1年のときには、「本物のチャンピオンを見せたい」と、インドネシアに連れていき、アテネ五輪の金メダリストで世界選手権でも金メダルを獲得している伝説的選手、タウフィック・ヒダヤットとの練習の機会を設けた。
 桃田さんは3年後の高校3年、目標通り世界ジュニア選手権で日本男子初となる優勝を遂げる。
 世界ジュニア選手権で優勝させることが一つの大きな目標だったというイマムさんは、桃田さんが卒業した13年、インドネシアに帰る。桃田さんへの指導などが評価され同年、インドネシア代表男子シングルスのコーチに就き、16年まで指導に当たったアンソニー・シニスカ・ギンティン、ジョナタン・クリスティなどは現在、国内の男子シングルス界をリードする存在になっている。
 富岡出身は他にも、女子シングルスの大堀彩さん、混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗組などがおり、「テレビを見ていると、教え子たちの活躍が見られるから楽しい」とイマムさん。
 最後に桃田さんは「あの人がいなければ、この位置までいなかったかなと思う」と語った。(上村夏美、写真も)

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