「政府転覆だ」 党内演説が漏えい 燃料値上げ反対派非難 ユドヨノ大統領
国会本会議で燃料値上げ延期を規定した国家予算補正案採決後の今月一日、ユドヨノ大統領が民主党本部で党幹部を前に演説し、民主党を裏切った連立政党や野党に対し「ナンセンス」「虚言」「政府転覆だ」などと痛烈に批判する様子を録音した音声記録が流出した。汚職事件で支持率低下に苦心し、反対デモが激化した重要法案の否決で政権の求心力喪失も指摘される中、慎重居士のユドヨノ大統領が公にはめったに見せない心情吐露と話題になっている。
マスコミなどに漏えいしたのは、民主党最高顧問会議議長を務めるユドヨノ大統領が、政府の燃料値上げ案が連立与党の離脱や野党によって否決された国会本会議の二日後、中央ジャカルタ・サレンバの民主党本部で党幹部を招集して行った演説の音声記録。
この中で大統領は、三月十四日に私邸で行った協議で、連立与党各党の足並みがそろっていないことを感じたと説明し、「連立政権はまとまっているとは言えない」との見解を表明。
国会予算委員会では承認しながら、本会議の土壇場で民主党を裏切った連立与党に矛先を向け、「はいはいと言い続け、採決で一変するくらいなら、最初からわれわれとは合わないと言えばいい。その方が立派な姿勢だ」と厳しい口調で非難した。
また「野党からは『われわれの政党は(野党だから)こうしなければならないんですよ。政治ですから。でも最終的には支持しますよ』とメッセージを送ってきた」と明かし、「ナンセンスだ!。神は書き留めている。(われわれを)だましているだけだ。(連立与党の)他党も同じだ」と痛烈に批判した。
■メガにも矛先
さらに本会議目前の中韓歴訪中から帰国直後にかけて展開された政党間の駆け引きに言及。「私は政治家の行動を注視した。中にはスハルト政権当時に閣僚を務めた政治家もいた」と失望感をにじませながら「本来なら、問題を対処するにあたり大統領が直接手を下すべきではない」と部下にも苦言を呈した。
窮地に追い込まれ、自ら党の舵取りをした理由として「非常に危機的な状況だったからだ。国家予算補正案が国会で承認されなければ経済が妨げられる。法令で認められた政府、民主党、大統領の権限を行使できず、何も決められない状態に陥れ、政権退陣を狙っているのだ」と反対勢力を批判した。
さらに口調を強め「(他党は)値上げに反対などと訴えていても、国民のためなどではない。値上げには賛成だが、低所得者層対象の現金支給プログラムは拒否するという案も同様だ。値上げに怒った国民に対し、何の救済措置も講じなければどうなるか。政府転覆を意図的に画策しているのだ」と苦言を繰り返しながら、ゴルカル党など連立与党や野党が提示した代替案受理に追い込まれた背景を述懐した。
また「地方首長が政府の方針に反対するとは国家反逆だ」と反対デモに参加した知事や市長らを非難、「デモを動員したのは大統領も務めた指導者だ」と最大野党・闘争民主党のメガワティ党首にも矛先を向けた。
■大統領も人の子
ユドヨノ大統領は、これまでにも公式の場の演説で「テロリストによる暗殺の標的になっている」などと語るなど、国家元首として不適切な発言と批判されることもあったが、あらかさまな他党批判を展開し、心境を吐露する様子が明るみに出ることは珍しい。
他党幹部はこの演説を冷静に受け止め、闘争民主党(PDIP)のプラモノ・アヌン国会副議長は「ユドヨノ大統領もごく普通の人間。部下の前で苦言を呈することもあるだろう」と理解を表明。ゴルカル党のプリヨ・ブディ・サントソ国会副議長は「党内部の記録が漏えいするとは」と驚き、民主党内部で対立が激化し、不満勢力が意図的に漏えいさせたのではとの見方を示した。