「日本好きの裾野広げる」 歌手の加藤ひろあきさん
ことしは日本とインドネシアの国交樹立60周年。数多くの関連イベントに出演・協力した歌手の加藤ひろあきさん(35)が、2019年の同61周年を「先頭きって全力で祝いたい」と意気込んでいる。この1年でユーチューブやインスタグラムのフォロワーは倍増。ローカルのイベント出演やアーティストとのコラボを加速させ「日本ファンの裾野を広げたい」と、日イ友好の今後を見据える。
14年にジャカルタに活動拠点を移してから、60周年をことし迎えることは当然、承知の上。しかし6月までは記念事業の引き立て役にまわる場面が続き、悔しさが募ったが、「それをパワーにできた。逆に(これまで通り)ローカルイベントや記念事業以外のいろいろなイベントも出演でき、(逆境が)プラスに働いた」と振り返る。
■アジア大会転機に
転機は7月。56年ぶりに自国開催した第18回アジア大会の公式曲「Bright As The Sun」の日本語版を担当することが決まった。ユーチューブに上がった動画は再生数100万回を突破。後に加わった公式曲「Meraih Bintang」、アジアパラゲームの「Song of Victory」も担当した。
影響はSNSに数字で現れた。この1年でインスタグラムのフォロワー数は4万3千に倍増。ユーチューブのチャンネル登録数は約2万から倍以上の5万7千に増えた。
さらに、バンテン州のショッピングモール、スマレコン・モール・スルポンで11月下旬にあったライブイベントなどで「アジア大会の曲歌ってたね」とファンでない人たちからも声をかけられ、認知度の上昇を実感。「日本と全く関係ない、日本への興味が基本的にない人たちにもっとアプローチして、こっちで住んで活動することの価値を高めていかないと」と自身が考える日イ友好への気持ちと考え方を新たにした。
近ごろは、楽曲を日本語版にして日本参入を模索する国内アーティストが少なくない。翻訳をきっかけに、日本での知名度向上に協力し、インドネシアでの存在価値を高めたい加藤さんは19年、国内音楽賞を狙い、イベントも的を絞って出演する。上半期に持ち歌の中で未制作のミュージックビデオ3~4本を配信し、下半期にシングル2~3枚、アルバム1枚を発表する予定。
■独立100年見据え
60周年記念事業の件数(10月末時点)は日本74、インドネシア180の合計254。加藤さんはうち23件に出演。記念事業以外では日イで52件をこなし、年間出演件数は、前年比3割増の計75件だった。
情熱を注ぐ音楽活動のかたわら、司会や本の翻訳もこなす。他にも「以前からストリートミュージシャン支援のような社会貢献活動もやっている。インドネシアの持続可能な開発目標(SDGs)達成の活動に該当するか、意味があることができるのか、45年のインドネシア独立100周年の時を見据えて活動していきたい」と語った。(中島昭浩、写真も)