現地クルーにテリマカシ 撮影環境「輸入したい」 「海を駆ける」 深田晃司監督
日イ仏合作映画「海を駆ける」の深田晃司監督(38)にとって、約1カ月のアチェでの撮影はとてもリラックスできる環境だった。深田監督は、優秀な現地クルーの雰囲気がよほど気に入ったようで「その雰囲気を日本に輸入したい。テリマカシ(ありがとう)」と感謝を伝え、「いずれまたインドネシアで映画をつくりたい」と話した。
サバンでの撮影中のエピソード。1時間以上の長い休憩の際、インドネシアのクルーが誰からともなく歌い出した。歌に合わせてイルマ役のスカル・サリさんが踊り始め、気がつけばインドネシアのクルーが合唱。
「負けじと日本のクルーもみんなで声をそろえて歌える歌を探そうとするがなかなか見つからず、何かこう苦労するみたいなことがあって。インドネシアのスタッフがむしろ気を遣って日本語で歌を歌ってくれるみたいな感じになったりする。本当にその雰囲気を日本に輸入したいなと思った」
他に、雨が降らないようにするための祈とう師「レインストッパー(パワン・ウジャン)」も輸入を希望。インドネシアでは撮影クルーに入れるのは常識だが、なじみがない日本側からすれば「真っ先にリストラ候補に挙がる部署」。一時は予算の関係で削られそうになったが、「文化摩擦」に発展しかねないため残すと「結果としては雨での撮影NGは1日もなかった」と驚きを持って語った。
インドネシアでの映画公開は目標の一つだった。「バンダアチェはジャカルタにとっても身近ではないと思うので、ジャカルタの人にどう受け止められるかがすごい楽しみ。見る人がこの映画を鏡のようにして、それぞれの自然への考え方とか、そういったものがあぶり出される作品になれば。それができれば成功だなと思う」と期待する。
さらに「災害を身近に感じている人ほど、今回の映画に対して非常に共感をしたり、より深い見方をしてくれる人が多いなという印象がある。そういった人と寄り添えるような映画に、インドネシアでもなっていってほしい」と願いを込めた。
今後も「またシンプルに作りたい。インドネシアで。バンダアチェに限らず、ジャカルタだったり、ジョクジャカルタだったり。インドネシアでものをつくるのがとても幸福な体験だった。今度は都市部で映画つくれないかなとか、いろいろ考えてはいるが、いずれまたつくりたいと思う」と話した。(中島昭浩、写真も)