「喜びの追求を愚直に」 虎屋の黒川社長が講演 PPIJなど ものづくりセミナー
インドネシア日本友好協会(PPIJ)、元日本留学生協会(プルサダ)、日本貿易振興機構(ジェトロ)は四日、松下ゴーベル財団、オマール・ニオデ財団、ガルーダ・インドネシア航空、ライフスタイル誌「CLARA」などの協力を受け、「虎屋の歴史とものづくり」セミナーを開催した。
中央ジャカルタのホテル・グランド・ハイアットで開かれたセミナーに、シャリフディン・ハサン協同組合・中小企業担当国務相、ラフマット・ゴーベルPPIJ会長、ガルーダ航空のエミルシャ・サタル社長のほか、地場の食品会社幹部ら約二百人が出席。ようかんの老舗で、和菓子の最高級ブランドである虎屋の十七代目社長・黒川光博氏が来イし、講演を行った。
黒川社長は創業から約五百年間にわたり、政治体制の変化などを乗り越え、同社が歩んできた歴史を説明。「十二代目の光正社長の時に、京都から東京の遷都に合わせ、虎屋も東京進出を決断した。この決断がなければ今の虎屋はなかったと思う」と話した。
一九二三年の関東大震災では、皇室中心の受注生産を改め、新聞広告の掲載をしたり、配達用自動車を導入したりして新規顧客を開拓。黒川社長は「歴史は積み重ねによってつくられる。一方、歴史があっても今の自分は保証されない。今やらなければならないことをやる。過去でも未来でもなく、今が大事。今の顧客に喜んでもらい、おいしいと思ってもらうことだ」と力を込めた。
虎屋の商品の製造過程の映像が流されると、参加者は興味深そうに見入った。映像では、製造ラインを分断させ、経験に裏打ちされた人の目や手で一つ一つていねいに作っていることなど高品質の菓子を作るためのこだわりが説明された。完成した色鮮やかな和菓子が映し出されると参加者からは歓声や拍手が上がった。
黒川社長は「愚直なまでの菓子作り。ここまでやるんだということに意味を見出している。喜んでもらうことを追求すれば、売り上げはついてくる。売り上げは第一義ではない」と話した。
質疑応答では、質問が殺到。セミナーは三時間に及んだ。「経営に関わるのは一世代に一人という形態でどうやってうまくやっていくのか」「フランスになぜ出店しているのか」などの質問が上がった。