【ロンボク島地震1カ月】「20年前に戻ったよう」 外国人経営者、復旧に汗
8月5日のロンボク島地震で被災した観光地ギリ3島では、復旧作業が始まっている。3島で最も大きいギリトラワンガン島では3日、観光客が来ず閑散とする中、宿泊施設やレストランを経営する外国人たちががれきの撤去作業に汗を流していた。
ダイビングスクールのプールの上には屋根がぐしゃっと崩れ落ち、アルゼンチン人インストラクターのガブリエナさん(30)が廃材を台車で運んでいた。地震発生時はプールに客がおらず、けが人は奇跡的にいなかった。「島に残った人で話し合って、再開できる施設は9月1日に一斉オープンしようということになったんだけど、復旧には時間がかかるし、客足はこの通り」と肩をすくめる。
レストランなどを経営する同島滞在歴10年のイギリス人男性(47)は、友人たちとリレー方式でトラックにがれきを積み込んだ。「10年間で今が一番閑散としている。20年前に戻ったみたいだ」
ギリ3島は1990年代以降に本格的に観光開発が進んだ。現在は外国人が経営する施設が多く、3島にホテルやビラなど87社の顧客を持つコンサルティング会社リリ・コンサルタンツのアジス・アスアリさんは「顧客の85%は西洋人」と話す。
同社が創業した2009年当時と比べ、3島の地価は9年で5~7倍に跳ね上がった。ホテルや飲食店、マリンスポーツ施設が年々増え、有数のビーチリゾート地として外国人観光客が訪れるようになった。
地震の翌日、観光客も従業員も一斉に島外へ避難した。リリ・コンサルタンツの顧客87社のうちこれまでに営業再開したのは15社のみ。多くは数カ月休業する見通しだ。「観光はいずれ戻ると思う。ただ、どこも最低でも5人は地元の従業員を雇っている。休業の影響は大きい」とアスアリさんは指摘する。
営業再開にこぎ着けた施設も厳しい現状を突きつけられた。3島のうち最東のギリアイル島で、数少ない営業中のホテルのマネジャー、クリス・パランダさん(45)に聞くと、繁忙期の8~9月は通常28室が満室だが、3日の宿泊は1組のみ。部屋の半数は損壊し、修繕のめども立っていない。「まだ渡航勧告を出している国もあると聞く。それが止めば、客は戻るんだろうか」
ビーチではイタリア人のメリッサさん(25)が1人、パラソルの下でくつろいでいた。地震の2カ月前に旅行を計画し、予定通りにバリ島を経由して来たという。「地震のことは心配だったけど、ビーチはとても美しいし、シュノーケリングもできる。閑散としているけど、これはこれで静かでいいかも」と話した。(木村綾、写真も)