政権「死に体」化進む 燃料問題の混乱で 求心力低下を露呈 大統領 残り任期2年半
土壇場で連立与党各党が離反し、「今月一日から値上げ」とする政府方針が覆された補助金付き石油燃料の問題で、出身母体の民主党の汚職騒動で支持率が低下していたユドヨノ大統領の一層の求心力低下が鮮明となった。政権二期目のユドヨノ氏の残り任期は二年半で現任期の半分を終えたところだが、各党がすでに次期選挙を見据えた動きを加速。ユドヨノ政権のレームダック(死に体)化は今後ますます進むとの懸念も上がる中、外交分野では存在感を増してきたユドヨノ大統領が、内政でも巻き返しを図ることができるかが注目される。
先月中旬、ユドヨノ大統領は連立与党各党の党首を西ジャワ州ボゴール県チケアスにある大統領の私邸に集めて政府方針に従うよう要請していた。だが、福祉正義党(PKS)は値上げに反対する姿勢を明確化。ゴルカル党は原油価格の上昇幅に応じて値上げを実施するという代替案を提示した。民主党以外の各党も採決直前に「一日から値上げ」とする原案に対し、反対に転じた。
国際戦略研究所(CSIS)の政治学者クリスティアディ氏はゴルカル党とPKSが政府方針に反対したのは、二〇一四年の選挙が近づく中で政権に協力するメリットが少なくなっているとともに、ユドヨノ氏の求心力低下を見切ったためと分析した。
英字紙ジャカルタ・ポストは社説で「死に体政権は民衆の怒りに降参した」と分析。「市場に対し、政権が分裂し、二〇一四年が近づくにつれて死に体化が進むという印象を与えた」とつづり、燃料値上げの見送りは財政問題としてだけでなく、政治の不安定化を印象付けたという意味でも、市場に不安材料を与えたと指摘した。
香港に拠点を置くウェブ・メディア「アジア・センチネル」は「二〇〇九年の選挙で勝利を収めたにもかかわらず、二期目に入って(求心力が)弱くなり続けている大統領にとって、(今回の燃料値上げ先送りは)死に体化の真の始まりになる」とつづり、「ユドヨノ氏が二〇一四年までに主要な政策課題を推し進める姿を想像することは難しい」と厳しい見方を示した。
■大連立も国会運営厳しく
スハルト政権退陣後の民主化の流れで、大きな権限の移譲を受けた国会はこれまでも、ユドヨノ政権にとって政策遂行の障害となってきた。
ユドヨノ氏は〇九年までの第一期政権時の国会運営において、当時の国会第一党でユスフ・カラ副大統領(当時)が党首を務めていたゴルカル党との対峙に手を焼いたことから、副大統領にはテクノクラート(官僚)として政党とは距離を置き、性格も温厚なブディオノ氏を抜擢。また当初は野党へ回る姿勢を見せていたゴルカル党を取り込み、国会議席数で七割超の大連立を形成し、国会運営の安定化を図った。
だが〇九年の第二期政権発足直後、破たんした銀行への公的資金注入をめぐる疑惑が発覚し、ゴルカル党の圧力を受ける形で改革の旗手と見られていたスリ・ムルヤニ蔵相が辞任に追い込まれた。
ユドヨノ政権の中心的な政策である汚職撲滅に対する取り組みでも、ゴルカル党が汚職犯に対する恩赦を取りやめる政府方針に反発するなどしており、改革の停滞が指摘されている。