【火焔樹】 ムスリム・ファッション
今年のレバランは夫の実家がある南スラウェシのマカッサルで迎えた。
無数の花火と大音量の「アッラー・アクバル」、オートバイの若者らが通りを駆け巡った前の晩とは打って変わって静かなレバランの朝。夜明け前に起床し、サッカー場での集団礼拝に向かった。
「ここに座りましょう。すぐに混雑して帰るのが大変になるから」と義姉が祈りの声が聞こえてくる場所からはまだ遠い位置に新聞紙を敷き始めた。
後から家族連れが続々と集まってきた。男性はペチこそ被っているが普段の服装とそう変わらない。が、女性らのバジュ・ムスリム(ムスリム衣装)の派手さに目を見張った。
マカッサルでレバランを迎えるのは3年ぶり。それまで女性の服装を意識したことはなかったが、今年は皆一様に底高のハイヒールを履いていて、さながらファッションショーのようだ。ヒジャブの巻き方も2重にしたり、横で花のように結んだりと、女性を目立たなくするはずのバジュ・ムスリムがかえって人目を引いている。礼拝時に上から被るものも以前は白一色だったのが、今回はピンクやブルー、目立つ刺繍を施したものもあった。
「雑誌やテレビでムスリム・ファッションが話題になってからから、ああいう格好の人が増えているの。随分とセクシーになったものね」と隣に座ったファティマさんが皮肉っぽく話した。
バリ島の祭礼で目立つのはクバヤ姿の女性だ。どれも一見同じように見えるが、流行があり、時とともに襟ぐりなどが少しずつ変わるので、そのたびに新調すると近所の若いバリ人女性は話していた。祭礼はクバヤファッションを楽しみ美しさを競う場でもあるのだと。
カラフルでエスニックなバジュ・ムスリムの女性が、寺に集まったバリ人女性の姿と重なった。次回の帰省の時はどうなっているのだろうと想像した。(北井香織)