助け合い、ひとつずつ 村が被災、テントで避難生活 ロンボク島在住の岡本さん
5日のロンボク島地震で、被害の大きかった北ロンボク県東プムナン村に住む岡本みどりさん(40)は自宅の離れが崩れるなどした。発生から3日目を迎えた7日も、家族や近隣住民と共にテントに避難している。約2900世帯が住む同村の家は9割が崩壊。支援が届かない中、被災者は助け合って暮らしている。
地震が起きた5日夜、岡本さんは州都のマタラム市に出かけていた。家には夫と5歳の娘、夫の母親がいる。すぐに夫のアスワディさんに電話した。「娘は無事。母が分からない」。その後、母親を見つけたアスワディさんは娘を抱き、携帯電話のライトを照らしながら、ブロック塀や家の壁が倒れた道を高台へ向けて走った。
岡本さんは翌朝、自宅へ向かった。家の近くの交差点はガラスが散乱し、家の前はがれきでぐしゃぐしゃ。「これはほんまや。うち、やられた」。そう思ったが、幸い母屋は残っていた。
近所の人から聞いて、家族がいるだろう高台へと向かった。千人以上の避難者の中から知り合いを見つけ、ようやく家族に会えたのは1時間後だった。
今は村人たちと共に、家族4人で避難生活を送る。草むらの上にシートやカーペットを敷き、ビニールシートを被せただけのテント。そのテントにも全員は入りきらず、大人たちは外で寝た。
政府の支援はまだ届かない。「1人じゃ無理。みんなで助け合うんだ」。村長のムハンマド・イフサンさん(42)をはじめ、男性陣が中心となって、手洗い場を作ったり火をおこしたりした。崩れた家の中から鍋や食料を持ち寄った。
「これも男性たちが作ってくれたんですよ」。避難場所と近くの井戸の間の川には竹製の橋が架けられ、井戸では子どもたちがきゃっきゃと水浴びしていた。ただ、大人は地震が起きた時の服装のまま。「テントも水浴びスペースも限られているし、女性は着替えられない」という。
ここに避難している人の大半はムスリム。礼拝時には、女性同士でムクナ(礼拝服)を貸し合う。自身もムスリムの岡本さんは「信仰が支えになっていると思う」と話す。
地震が起きた時、慣れていない住民たちはパニックになった。家を立て直さなければいけないし、その手立てを失った人も多い。「だけど、考えたって仕方がない。ここでの生活は普段より不便だけど、私は助かって家族も無事。ないものを数えたらきりがないけど、今目の前にあることを、ひとつずつ」と前を向いた。(木村綾、写真も、8面に関連)