【ERIA特集】世界経済転換で増す存在感 ERIA設立10周年
東アジアの経済統合推進のために、政策研究や政策提言をおこなう国際機関のERIA (東アジア・アセアン経済研究センター)は6月3日に10周年を迎えた。ERIAは、東アジア地域のセンター・オブ・エクセレンス(中核的研究拠点)として、各国政府に実践的な政策提言を行い評価を受けている。ASEANの日を明日に控え、ASEANのシェルパ(準備進行役)としての働きを担うERIAの実績を紹介する。
ERIAのコンセプトは、経済産業省が06年に発表した「グローバル経済戦略」の東アジア版OECD(経済協力開発機構)構想にあった。この構想は、二階俊博経済産業相(当時)が06年に提案、翌07年の第3回東アジアサミット(EAS)で、ASEAN10カ国と、日本、オーストラリア、中国、インド、韓国、ニュージーランドの首脳によってERIA設立が承認された。そして08年6月3日、ジャカルタのASEAN事務局で設立理事会が開かれ正式な設立となる。
■活動と実績
ERIAは、経済統合の深化▽開発格差および貧困の縮小▽持続可能な開発の実現——を政策研究の柱に据え、東アジアの経済統合の推進のための調査と分析、政策提言などを行い、各国の政策的な取り組みを支援する。ERIAは設立以来、ASEAN連結性の強化、経済統合プロセスのモニタリングや評価、非関税障壁、インフラ開発、エネルギー政策、中小企業振興にかかわる政策の提言に取り組むとともに、シェルパ(準備担当役)としてASEANサミットなどで議長国のサポートを行ってきた。ASEAN設立50周年の昨年は、各国の元首級の回顧と展望に関する論文集「ASEAN@50」の出版や3共同体に関するシンポジウム、ハイレベルフォーラムなどを実施した。
保護主義や自国至上主義の流れが世界を取り巻く中、開かれた独立性のある国際機関として、世界の研究機関や国際機関と協力し、ASEANや東アジア地域に高度な調査と分析、政策提言を行うERIAの存在はさらに重要度を増していくと考えられる。(太田勉)