「値上げ絶対拒否」 高速道路を占拠 ヘリが上空旋回

 気温三十五度の炎天下。国会前の路上にデモ隊があふれた。ガトット・スブロト通りと併走する高速道を封鎖。高速の柵が破壊され、車が一台もない上り下り十車線にはデモ参加者が座り込み、あちこちで物を焼く黒煙が立っていた。
 上空は国会敷地内から発着する国家警察のヘリコプターが旋回し警戒を強めている。「値上げを廃案にするまで帰らない」と労組デモのコーディネーター、ヌルディン・ムフディン氏は力を込めた。
 午後二時五十分。ついに国会本会議が始まった。正門と裏門を塞ぐデモの掛け声が響く。二重に隊列を組んだ機動隊とのにらみ合いが続く。値上げをめぐる議論は各論に割れ、袋小路に入った本会議は午後三時五十分に休会。再開予定の午後五時になっても始まる気配はない。
 議場は内外のメディアでごった返し、三階観覧席への階段には長蛇の列ができた。構内には即席のスタジオができ、議員がインタビューを受ける。記者らはスマートフォンやパソコンと格闘し、いち早く原稿を送ろうと必死だ。
 午後四時二十分、学生が加わり膨れあがったデモ隊が正門をこじ開けた。左右の側壁もほとんど破壊され、デモ隊が国会構内に乱入する。「ぼくたちはナショナリストで、無政府主義者じゃない」と学生団体のアフマッド・ユヌスさん(二〇)。「ハロハロ・バンドゥン」「インドネシア・ラヤ」。愛国歌を歌うデモ隊の中には、催涙弾よけの歯磨き粉を顔に塗った若者の割合が増え、機動隊の盾の列との距離が狭まっていく。
 午後七時十分、長い均衡がいきなり崩れた。機動隊が催涙弾を打ち、放水車が水を噴出させ、学生を正門周辺から追い払う。デモ隊をかく乱させるためか、激しく点滅する照明がたかれ、緑やピンク色の色鮮やかな花火も打ち上げられた。煙とせん光の嵐の中を学生たちが逃げ惑う。
 午後八時ごろ、国会の第一次採決開始時刻が同九時三十分に決まった。議場で居眠りする議員も出始めるなど疲労の色が濃い。国の行く末に関わる重要法案ははたしてどこに行くのか。労組員のアレクサンダルさん(三六)は「政治家はカネを普通の人のために使ってほしい」と願いを込めた。政党の駆け引きが良い結果に結びつくことが市民の切なる望みだ。

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