35人合格、合格率37% インドネシア人介護士 第1陣初挑戦の国家試験 「予想上回る好結果」
厚生労働省は二十八日、介護福祉士の国家試験で、日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づく看護師・介護福祉士受け入れ事業で日本で働いているインドネシア人候補者九十四人が受験し、三十五人が合格したと発表した。合格率は三七・二%。EPAの介護士派遣では、国家試験を受験するには三年の実務経験が必要とされており、今回が二〇〇八年に日本に入国した第一陣の候補者にとって初めての受験。日本人を含む全体の合格率六三・九%と比べると低い水準にとどまったものの、同様にEPAに基づいて派遣されている看護師候補者の今年の合格率一三・二%(二十六日発表)と比べて高い合格率となった。
第一陣の派遣時はEPAによる看護師・介護士候補者の受け入れが締結されたばかりで、事前の情報も少なく、政府の施設に対する支援も整わないまま駆け足で始まったが、初めての国家試験で約四割の合格率に達し、厚労省は「予想以上に高い合格率だった」との見方を示している。
EPAに基づく介護士ではほかに、日本での三年の実務経験という条件を満たしているフィリピン人候補者一人が受験し、合格した。EPAに基づく介護士候補者全体の合格率は三七・九%だった。
EPAの規定では滞在期限は四年とされているが、当初は支援制度が整っていなかったこともあり、政府はすでに〇八年と〇九年に入国した候補者に関しては、国家試験の成績上位者に限り特例で一年の滞在期限延長を認めることを決定している。
看護師の国家試験では難解な漢字などがネックとなり、合格率が低水準にとどまってきた。これを受け、看護師試験と同様、介護士試験でも専門用語に振り仮名を付けるなどの措置を取った。来年からは両試験とも、外国人候補者が受験する際には試験時間を延長するほか、すべての漢字に振り仮名を付ける措置を取ることを決定している。
■介護士は定着も可能
東南アジアの地域研究が専門で、看護・介護労働者の国際移動などを研究する京都大の大野俊特任教授は、インドネシア人介護士候補者の合格率が四割近かったことについて「インドネシア人看護師候補者の合格率が一三%にとどまった中で、(毎年受験できる)看護師と違い一発勝負の介護士候補者の合格率は大方の予想を上回るものだった」と評価。
「看護師に比べて介護士は人手不足という現状があり、また施設側のインドネシア人介護士に対する評価も高かったことから、滞在をさらに延長してほしいという要望が強い」と語り、「特例措置によって来年受験する候補者も含めて、合格者が過半数をクリアできれば、EPAによる介護士受け入れ制度はある程度定着させることが可能」との見方を示した。
一方で四回目の受験となった看護師国家試験では依然としてインドネシア人候補者の合格率が低い水準にとどまっていることについて「定着へ向けて課題は多い」と述べ、さらなる試験制度の改善が必要と指摘した。
■「日本は努力に感謝」
EPAの看護師・介護士候補者を継続的に支援してきた海外技術者研修協会(AOTS)の大谷秀昭・広報グループ長は、候補者たちが頻繁に連絡を取り合っているフェイスブックで「合格できなかった方もがっかりしないでください。三七・九%が合格ということは、六二・一%は不合格です。皆さんの努力は日本人の誰もが知っていますよ。日本のために本当にありがとうございます。心から感謝します」とつづり、候補者たちをねぎらった。