燃料値上げ承認へ 各地で反対デモ激化 予算増の「苦肉の策」

 インドネシア歴代政権の「鬼門」である補助金付き石油燃料の値上げ案が国会で可決される見込みとなった。イラン制裁問題による原油高を受け、政府は四月一日、財政を圧迫する補助金を抑制し、一般向けのプレミウム、軽油の千五百ルピア値上げに踏み切る。物価上昇を引き起こす値上げに反対する学生らの抗議活動は二十七日、ジャカルタをはじめ各地で計四万人を動員、大通りを占拠し、警察と衝突するなどしたが、大きな混乱はなかった。

 三月以降、全国各地で断続的に行われてきたデモは二十七日に最大規模に膨れ上がり、国家警察は全国で四万八百人が参加したと発表した。インドネシア労働組合連盟(KSPI)などの全国労組は、与野党の攻防が続く国会の本会議が開かれる二十九日、国会前でデモを予定している。
 ジャカルタでは二十七日午前十時から、闘争民主党(PDIP)やイスラム系小政党の支持者数千人がホテル・インドネシア前から独立記念塔(モナス)広場まで行進し、大統領宮殿前で警官ともみ合いになり、警察は放水車で退散させた。
 午後四時ごろには、市内を個別に行進していた学生団体らが集結し、モナス東側のガンビル駅前で機動隊と衝突。約一時間、投石や棒で攻撃する学生に対し、機動隊は放水銃や催涙弾を撃ち、一時騒然とした。
 ただ、一般市民には原油価格が高騰し、輸入国のインドネシアの打撃になるため、値上げ理解の素地が広まっている。〇八年の原油高の際、政府は燃料費を今回と同じ六千ルピアに引き上げたが、与党・民主党への支持低下にはつながらず、翌〇九年総選挙では国会第一党に躍進した。

■ 野党勢力は反発
 値上げ案は二十六日、予算委を通過した。闘争民主党や小政党の野党が価格据え置きの対案を出していたが、連立与党の足並みがそろった。二十九日、本会議に提出され承認される見通しだが、抗議運動が拡大し、民意に配慮する姿勢を示す連立与党の議員も出ている。
 二〇一二年予算修正案では燃料などに対する補助金は三十兆六千億ルピア増の二百二十五兆四千億ルピア。内訳は、石油燃料補助金を十四兆四千億ルピア増額し百三十七兆四千億ルピア。電気料金を十四兆三千億ルピア増額し六十五兆ルピア。予備費は二十三兆で据え置いた。
 昨年は猛反発を受け、値上げ案は先送りしたが、今年は年明けから政府が補助金全カットと燃料の天然ガス化のセット案を提示。しかし、ガス化案の実現性が疑われる中、原油価格が高騰、政府はガス化を先送りし、値上げ案に絞った。だが、三三%値上げも予算は修正前より三十兆ルピア増える「苦肉の策」だ。
 燃料補助金は低所得者よりも、自動車などを保有する中間層に利す「誤目標」とされる。政府は低所得者層対象の現金支給政策で効率的に社会の不満を吸い取る意向だ。
 インドネシアは〇四年に石油純輸入国に転落、近年、生産は暫減傾向が続く。これに対して、消費は好調な経済成長に背中を押され、右肩上がりを続ける。石油燃料一本足から抜け出すため、ユドヨノ大統領は年初、グリーンエネルギーなどを取り入れた「エネルギーの多様化」を目指す方針を示していた。

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