客船沈没、189人不明 トバ湖 大幅な定員超過か
北スマトラ州のトバ湖で18日にあった客船沈没事故で、運輸省は20日、同日午後2時までに死者が4人に増え、21人を救助したと発表した。乗客名簿はなく正確な乗船者数は不明だが、親族などの申告による行方不明者数は189人に上るとみられ、大幅な定員超過で運航していた可能性も出ている。
運輸省によると、沈没した連絡船「シナール・バングン」は長さ17メートル、幅4メートルの2階建ての木造船(35トン)で、定員43人。湖内中央にあるサモシル島サモシル県シマニンド港と、湖外周側のシマルングン県ティガラス港を結び、オートバイや食料などを運搬する地元民の生活の足だった。
事故発生は18日午後5時15分。現場はティガラスから約500メートル地点で、水深300〜500メートルの湖内北東部の最深部にあたる。事故時の湖内は、雷を伴う強風と最大2メートルの高波が発生し、船が転覆、沈没したとみられる。救命胴衣は定員に合わせ45着しか装備されていなかったという。
北スマトラ州警察は20日、サモシル島の連絡所が家族から受けた報告で、行方不明者数が189人になったと発表した。これについて、ブディ・カルヤ・スマディ運輸相は、あくまで住民による申告数で「多くても80人ぐらいだろう」との見方を示した。
レバラン(断食月明け大祭)休暇中で、帰省客や観光客が多数乗船していた。外国人の乗客は報告されていない。
バサルナス(国家救命隊)によると、収容された4人の遺体はいずれも事故現場から3〜5キロほど流された地点で見つかった。バサルナスと海軍、海上警察などからなる捜索チームは、潜水部隊や水深200メートルまで捜索できる水中探査ロボットを投入。だが、水中は暗く水温も低いため、捜索は難航している。
連絡船について、ブディ運輸相は「地元運輸局から運航許可を取得し合法的に営業していた」と説明。湖内で営業する40の木造船運営業者や波止場管理者に対し、運航規則や安全基準を調査し、規則を改定する方針を示した。
今後、救命胴衣5千枚を業者に配布し、乗船時の着用を呼びかける。また、トラックなどを運搬するRORO船4隻を運輸省が調達し、安全向上に努める。同州内の民間企業が、企業の社会的責任(CSR)活動で船2隻を提供する意向を示しているという。
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は同日夜、西ジャワ州ボゴール市のイスタナ(大統領宮殿)で会見し、船舶の航行の安全基準を見直し、同様の事故の再発防止に努めるよう運輸相に指示したと話した。(中島昭浩)