インドネシア人34人合格 合格率13% 大幅増加も依然低水準 看護師国家試験 第一陣不合格者は帰国へ
厚生労働省は二十六日、今年二月に行われた看護師国家試験で、日本とインドネシアの経済連携協定(EPA)に基づく看護師・介護福祉士受け入れ事業で日本で働いているインドネシア人看護師候補者二百五十七人が受験し、このうち三十四人が合格したと発表した。合格率は約一三・二%。昨年のインドネシア人候補者の合格率六%から大幅に増加したものの、依然として低水準にとどまっている。二〇〇八年に第一陣として日本に入国し、今回の試験で不合格だった候補者は今年八月に日本での滞在期限が切れ、インドネシアへ帰国することになる。
EPAでは合格した候補者は正規の看護師として日本での労働・滞在が認められるが、合格しなかった場合の滞在期間は三年間と規定されている。難解な日本語の試験などがネックとなり合格率が低調にとどまっていたことから、日本政府は試験で高得点を収めたが不合格だった〇八年入国の候補者に関して、特例で一年間の滞在期間延長を認めた。
今回、特例措置で滞在を延長して受験した候補者は二十七人。このうち八人が合格した。合格率は二九・六%。第一陣の百四人の候補者のうち、最終的な合格者は二十四人、合格率は約二三%となった。
昨年夏までに多くの第一陣候補者がインドネシアに帰国したが、帰国後の再挑戦は認められており、今回は四人がインドネシアから日本を訪問して再受験。一人が合格した。
〇九年に入国した第二陣は百五十二人が受験し、二十二人が合格。合格率は一四・五%。第一陣と同じく、一定の点数以上の候補者は一年間の滞在期限延長の特例措置が認められる。
今回の試験でEPAに基づいて受験したインドネシア人とフィリピン人候補者の合格者数の合計は四十七人で合格率は一一・三%。日本人を含む全体の合格率は九〇・一%だった。
低調な合格率が続き、候補者の数も減少している中、政府は国家試験で難しい漢字に振り仮名を付けたり、疾病名に英語を併記するなどしたほか、日本に入国する前にインドネシアでの日本語研修期間を長くするなどの対応を取っている。来年からは試験時間を延長することも決めた。
■「合格者への支援も」
EPA看護師派遣事業について研究を続けている長崎大の平野裕子教授(保健医療社会学)は「一気に合格者数が増えたという印象。日本人の合格率が前年と比べて下がったのに対し、インドネシア人の合格率は向上した。政府の支援制度がそれほど整っていない中で、候補者や病院の努力以外の何物でもない」と強調。「合格して働き始めたが、日本人のあうんの呼吸のようなコミュニケーションができず、苦しんでいるインドネシア人看護師もいる。今後インドネシア人看護師が定着するためには、政府が合格した看護師への支援にも力を入れる必要がある」と指摘した。
◇「家族呼び寄せる」 東京のユスプさん
東京都杉並区の河北総合病院で働くモハマド・ユスプさん(三〇)は、厚生労働省からの電話で合格を知った。電話を受けた部屋には、「お母さん」と慕う病棟の看護師長なども駆け付け、泣いたり、抱きしめ合ったりしながら合格を喜んだという。
妻と六歳の子どもをインドネシアに残して日本へ来たユスプさん。昨年、不合格だった際には多くの候補者の友人が帰国を決めたこともあり、日本で働くことをあきらめようかとも思った。だが、「大丈夫。頑張りましょう。一緒に勉強しましょう」との病院の上司や同僚たちの励ましがあり、もう一度、難解な国家試験に挑戦することにした。
来月には家族を日本へ呼び寄せて新生活をスタートさせる。すでに合格している友人からは、実際に働くことは難しいとも聞いているが、「でもやってみます。もっともっと頑張りたい」と力を込めた。