日本軍政期の3年半 プロパガンダポスターで振り返る インドネシアで初展示
日本軍政期の1942〜45年の約3年半に政府や軍がインドネシア各地で発行していたプロパガンダ(宣伝)ポスターなどを紹介する企画展が7〜10日、中央ジャカルタの文化施設タマン・イスマイル・マルズキ(TIM)で開かれた。日本人はもちろんインドネシア人も目に触れる機会が少ない、当時の日本人画家の作品で歴史を振り返り、後世に伝えている。
同展のキュレーターを務めたジョクジャカルタ特別州在住の歴史学者アンタリクサさん(42)は、日本軍政期のインドネシアにおける芸術について約10年にわたり研究、同様の企画展をこれまでにフランスとベルギーで開催してきた。今回は、一般の目に触れてこなかった日本軍政下の政治宣伝作品を今の世代に知ってもらおうとジャカルタ芸術協会が主催、創造経済庁が協力し、インドネシアで初開催した。
当時の日本は宣伝工作のため画家や漫画家ら約300人を東南アジアに送っており、彼らが描いたポスターはインドネシア各地で掲示されたという。アンタリクサさんはほぼ毎年日本を訪れ、インドネシアに渡った画家・小野佐世男の家族に面会するなど研究を重ねてきた。
「防諜」「ニッポンゴデハナシマセウ」「亜細亜の光日本」――。会場には日本語やインドネシア語の宣伝ポスターを中心に約40点が並んだ。多くはオランダの戦争・ホロコースト・大量虐殺研究所(NIOD)の所蔵。戦意高揚を狙ったものが多いが、中には行商人や牛車、市場の様子などを描き、当時の生活が伺える絵画もある。
企画展に合わせて映像上映や討論イベントなども開催、場所柄もあり学生など若者も多く来場した。1日400〜500人が訪れ、歴史の展覧会としては予想以上の反響だったという。来年3月にはアラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャで開かれる芸術祭での展示が決まっており、アンタリクサさんは今後も研究や展示活動を続けていきたいとしている。(木村綾、写真も)