特殊部隊が5人射殺 武装組織がバリでテロ計画 資金調達で強盗準備も
十八日午後八時半(現地時間)ごろ、爆弾テロの資金調達のためバリ州各地で強盗を計画していたとして、国家警察対テロ特殊部隊は、武装組織が潜伏している同州デンパサール市内二カ所を急襲、抵抗した容疑者と撃ち合いになり、計五人を射殺したと明らかにした。バリでは二〇〇二年、〇五年にテロが発生、観光業に多大な影響を与えた。警察や自治体は不審者の監視を強化、あらためてテロを未然に防ぐ措置を講じる方針だ。
警察対テロ特殊部隊は、デンパサール市サヌールの高級住宅地に隣接するダナウ・ポソ通り沿いの売春宿を襲撃。潜伏していた三人が拳銃で発砲するなど抵抗したため、射殺した。この三人はバンドンやマカッサル出身だった。
同市グヌン・サポタン通りでは、メダンのCIMBニアガ銀行強盗事件で指名手配していたバンドン出身者とバリ州ジンバラン在住者の計二人を摘発。同様に撃ち合いとなり、被弾した二人とも死亡した。遺体は十九日、ジャカルタの警察病院に移送された。
警察は、アジトから拳銃二丁、ライフル一丁、弾倉二個、銃弾四十八個、覆面などを押収。三カ月前から内偵を進め、容疑者を尾行していた。調べで、強盗の標的となっていたのは、クタのスリウィジャヤ通りの両替商「バリ・マネー・チェンジャー」や、ジンバランのウルワトゥにある貴金属店、サヌールのカフェだったことが判明したという。
国家テロ対策委員会(BNPT)のアンシャアド・ムンバイ事務局長は、この武装組織はメダンとソロのテロ組織と関係があると指摘。バリでテロを実行するため、強盗で資金を調達し、着々と準備を進めていたとの見方を表明した。
メダンなど北スマトラ州では一〇年九月、テロ資金調達の銀行強盗事件が発生。犯行グループ摘発に対する報復として、同州デリ・スルダンの警察署が襲撃された。この武装組織は、米国がテロ組織と認定した強硬派指導者アブ・バカル・バアシル受刑者(上告審で禁固十五年)の組織が関与していたことが判明している。
邦人二人を含む二百二人の死者を出した〇二年の爆弾テロ事件で捜査を指揮した元国家警察高官のイ・マデ・マンク・パスティカ州知事は、テロを未然に防ぐことに成功した警察に謝意を表明。バリ・ヒンドゥー教の祭日ニュピの二十三日を前に、人が集まる際には市民も十分警戒してほしいと呼び掛けた。
また、年内にはバリへの出入り口となる場所に銃器や爆発物、麻薬などの探知機を設置し、バリの治安維持強化に努めると言明した。
◇売春宿にアジト 外国人も多い地域
現場はサヌールの観光ホテルやお土産が並ぶタンブリンガン通りに近いダナウ・ポソ通り。クタやヌサドゥアに通じるバイパス道路から海側に入る道で、バイパスの反対側にはバリ日本語補習授業校がある。在住外国人や邦人、名誉領事が詰める在外公館事務所も多い地域だ。
容疑者らが潜入していたのはホテルだが、ホテルとしての看板はなく一見個人宅。通りを隔てたところに二十年前から暮らしている住民ルイスさんによると、売春に利用される「トランジットホテル」として知られており「身分証明書の提示など求められず、いろいろな人が頻繁に出たり入ったりしているので、アジトとして利用されたのでは」と語る。
近所のスポーツクラブのスタッフらは「こんな近くにテロリストが隠れていたのはショック。ニュピの前にテロを起こそうとしたのかもしれない。とにかく事前に食い止められて良かった」と口々に話していた。
バリ人主婦のデウィ・プスパさんは「バリ島はもう大丈夫だと思っていたのに、こんなことが起こって、びっくりしている。殺されたのはジャワ人と聞いている。外来者にひっかき回されるのはもうたくさん」と怒りを露にした。