水質改善に日本の技術 チタルム川浄化へ紹介 JICAセミナー
ジョコウィ大統領が重要課題に位置付ける西ジャワ州のチタルム川浄化に、日本の技術を活用しようという趣旨のセミナーが27日、同州バンドン市内のホテルで開かれ、日系企業6社が水質改善技術を紹介した。海事調整省と国際協力機構(JICA)が共催、チタルム川流域の自治体職員や工場関係者ら約120人が招かれた。
チタルム川は西ジャワ州を縦断する全長269キロの川で、ジャカルタ特別州の飲料水の8割をまかなう。西ジャワ州環境局によると、同川流域には繊維や食品など約2800の工場があるが、約半数は廃水処理設備がなく川に排水を垂れ流しているほか、基準を満たす設備を持つ工場は全体の1割にすぎないという。これが川の汚染原因の一つとして長年問題視されてきた。
セミナー冒頭では、鉱山の未処理廃水が原因で富山県の神通川流域で発生した公害病「イタイイタイ病」や隅田川や多摩川の水質改善の歴史が、日本側から紹介された。
ティビーアール(本社・愛知県豊川市)は、微生物の力で汚れた水を浄化するひも状の装置「バイオコード」を紹介した。工場の排水処理や河川浄化に活用実績がある。2014〜15年には北ジャカルタ区プルイットの排水路でも同装置の実証実験を行い、水質汚染の指標が改善されたと効果をアピールした。
Jトップ(同・大阪府和泉市)は、活性炭を使って排水から有害物質を取り除き、再生水を作り出すシステムを紹介。同社はバンドン工科大学などと協力して15年、チタルム川上流域の三つの繊維工場を対象に同システムの実証実験を行っており、利用可能な再生水を作り出せることが証明されたが、その後もインドネシアでは導入が進んでいない。仲喜治一社長は「初期費用が(約14万ドルからと)高いことが理由だと思うが、(放っておけば)その間に段々とチタルム川が悪化し、コストは数年後に数倍になるだろう」と警鐘を鳴らす。
バンドン県・市の4カ所に繊維工場を持つムルティ・ガーメンジャヤ社の人材部門マネジャー、コリルさんは各社のプレゼンを聞き、「排水の再利用装置はコストが高いが、今後取り入れていかないといけないと思う」と話した。
JICAインドネシア事務所の原田徹也次長は「今回紹介した技術が本領を発揮するには、適切な排水処理が行われるための基準やルールづくりも非常に重要。コストをかけてルールを守っている企業が評価される仕組みが必要だと思う」と締めくくった。(木村綾、写真も)