開業目標1年先送り バンドン高速鉄道 土地収用まだ56%
ジャカルタ〜バンドン間の高速鉄道計画で、高速鉄道インドネシア・中国(KCIC)のドゥウィ・ウィンダルト社長代行は21日、当初2019年としていた開業目標を2020年に1年先送りすると明らかにした。当初16年内に完了を目指していた土地収用は大幅に遅れ、現時点で56.5%を終えたのみ。起工式から2年以上が経ったが、工事の進ちょく率は5%にとどまっている。
リニ・スマルノ国営企業相は21日、西ジャワ州西バンドン県のワリニ駅近くのトンネル工事現場を訪れ、インドネシア語と中国語で「中国中鉄ワリニ・トンネル事業」と書かれた看板の周りを視察した。現場周辺には横断幕や旗などが設置され、高速鉄道事業が進んでいることをアピール。工事現場がメディアに公開されるのは16年1月、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が出席した起工式以来で、中国主導の同事業の遅れが政権への批判材料となることを避けるための思惑が見え隠れした。
ハンゴロ・ブディ・ウィラヤワン社長(当時、現在は同社顧問)は16年7月にも、土地収用は約60%が完了し「順調」とアピールしていたが、実際は難航しているとみられる。
地元メディアによれば、リニ氏は同日、19年開業は困難との見方を示すとともに計画の遅れを謝罪した。建設予定地はジャカルタ特別州、西ジャワ州の9県市にまたがり、うち4県市で国家空間計画(RTRW)の策定が遅れていることが、土地収用の遅れにつながったという。土地収用には9兆ルピアを割り当てており、リニ氏は地権者らとの協議に基づいて進めるよう指示した。
同高速鉄道はジャカルタ〜バンドンの全長140キロを時速350キロ、約45分で結び、ハリム(東ジャカルタ区)、カラワン(西ジャワ州カラワン県)、ワリニ(西バンドン県)、トゥガルルアル(バンドン県)の4駅を設ける計画。
KCICによれば、現在、ワリニ駅とハリム駅の周辺でトンネル工事を行っているほか、ハリム駅近くなどで高架線路の建設に着手した。既存の線路を使わずに新線路を設け、20年半ばに線路敷設に取り掛かり、20年末に完了する計画としている。
ワリニ駅の近くには長距離列車などが停車する国鉄のマスワティ駅があり、リニ氏は高速鉄道への乗り換えを容易にしたいと話した。
日本と中国が受注を競った同高速鉄道は、最終的に中国案が採用され、国営企業と中国企業合弁のKCICが建設を進めている。総事業費約60億ドルの大半は中国側が融資する計画となっている。(木村綾)