純日本産の「桃姫」 ハラル化粧品 ムスリムに安心を
純日本産のハラル化粧品「桃姫」が人気を集めている。販売元のPBJ(本社・東京都足立区)執行役員の小林正幸さん(51)が商品を企画。桃を使用した原料から製造工程、容器にまで「メードインジャパン」にこだわりハラル認証を取得した。「ムスリムに安心して使ってもらいたい」とインドネシアで販売を強化していく。
「日本の化粧品は高品質だけど値段が高い。ハラルかどうかも分からない」。商品開発のきっかけは、小林さんが海外進出コンサルタントとして市場調査でジャカルタを訪れた2014年11月、肝炎にかかり入院した時に対応してくれた女性看護師から聞いた、この言葉だった。「それなら価格を抑えたハラル化粧品を作ってしまえば」と袖をまくった。
インドネシアでの販売を前提に、現地以外に日本でも事前調査を実施。東京都豊島区の大塚モスクなどでムスリムの女性からヒアリングした。美容や健康にも良い原料は何か。そこで思いついたのが桃だった。
ヒントは家庭から得た。妻・美枝子さんの実家は青果店。夏場になると美枝子さんの母が「身体にいいから」と毎朝食卓に並べる桃を思い出した。その後の調査で、桃に美肌やアンチエイジングなどの効能があることを突きとめた。
桃姫には保湿・美肌効果のある桃の葉と果汁、種のエキスに肌荒れ改善に作用する桜とシソの葉エキスなど、七つの保湿成分を配合。原料から製造工程、容器に至るまで徹底して日本産にこだわる。
商品は、日本イスラム文化センター(JIT)からハラル認証取得済みの製造ラインを持つマーナーコスメチックス(同・千葉県市川市)で製造。桃姫自体も15年12月にJITから認証を取得。インドネシアの認証機関であるイスラム学者会議(MUI)とJITとの間で近く相互認証が始まる見込みで、あらためてMUIからハラル認証を取得する予定という。
米国やシンガポールでの海外生活が長かった小林さん夫妻は、商品開発を進める中で、インドネシア人との交流も盛んになり、ムスリムの考え方を学んだ。「日本の考え方と一緒」と感じ、夫妻でムスリムに改宗、小林さんの名刺にもムスリム名の「ウマル」が付く。これが「日本人のムスリムが作ったハラル化粧品」と安心感を与えることにつながった。
日本では16年の桃の節句に販売を開始。シンガポールやマレーシア、台湾にも展開し、インドネシアでは17年8月末から、イオンモールや通販サイトのトコペディアで洗顔フォームと化粧水、保湿クリームを販売。日本でのラインナップは、美容液、クレンジングオイル、日焼け止めを加えた全6種類をそろえる。
課題となっていた価格は3点セットで計100万ルピアほど。小林さんは「原産地証明書を取得しているにもかかわらず、税関手続きなどで価格は日本の約1・4倍」と話す。販売は目標の約半分にとどまっている。
今後の課題にはプロモーションを挙げる。ネットを駆使し、ソーシャルメディアから直接注文できるように工夫する。自社通販サイトにはインドネシア語ページも作成した。日本では、ムスリムの留学生や日本人と結婚したムスリム女性の間で広まり、桃を縁起が良いとする中国人にも人気という。
小林さんは「日本にいるインドネシア人のほとんどが郵便口座を持っているので自社通販サイトも対応させた。マレーシア人よりもインドネシアの女性はノリが良い。盛り上げるようなプロモーションをしていきたい」と意気込んだ。(中島昭浩、写真も)