ホンダが新工場建設 小型MPV市場に参入 投資額270億円 年産3倍の18万台に
ホンダの四輪車製造・販売法人、ホンダ・プロスペクト・モーター(HPM)社は十五日、南ジャカルタの工業省で記者会見を開き、既存の工場がある西ジャワ州カラワンに新工場を建設すると発表した。投資額は三兆一千億ルピア(約二百七十億円)で、既存工場と合わせた年間生産能力を現在の六万台から十八万台と三倍に増強。インドネシアの「最大市場」(ホンダ本社の松本宜之執行役員・四輪事業本部・第三事業統括)となっている小型MPV(多目的車)市場に新興国向け小型車「ブリオ」を投入し、急伸する国内市場で昨年大幅に落としたシェアの挽回を図る。
新工場の総面積は九万五千平米。立ち上げ時の従業員数は二千人で年産能力は十二万台。生産台数の二〇%を輸出する予定。二〇一四年第一・四半期から稼働を開始し、ブリオを中心に生産する。現地調達率は八〇%まで高める方針。ホンダはインドネシアではこれまで、ジャズ、CR―V、フリードを主に生産してきた。
ブリオはタイとインドで昨年、生産・販売を開始した新興国向けの低価格小型車。排気量一二〇〇ccで、インドでは約七十万円で販売している。インドネシアでの製造・販売は、インドネシア政府が二〇一三年にも導入することを検討している低価格・低燃費の「エコカー」向けの税制優遇策も背景にあるとみられる。
二〇一二年中にタイからの完成車輸入で販売を開始。一三年から既存工場での生産を開始し、一四年から新工場に移管する。
■泰・印に並ぶ拠点に
ホンダは東日本大震災とタイの洪水被害による部品の供給不足の影響で、二〇一〇年の六万千三百三十六台(シェア八・〇%)から二〇一一年は四万五千四百十六台(同五・〇八%)と販売台数を大きく落とした。
今年の国内年間販売台数を昨年の八十九万台から九十五万台になると見込む中、販売台数目標を七万台に設定。国内販売台数が百十二万台になると見込む二〇一五年には二十一万台の販売を目標としている。
記者会見にはヒダヤット工業相、工業省のブディ・ダルマディ最先端技術活用主要産業総局長、ホンダ本社の小林浩常務執行役員・アジア大洋州本部長、松本宜之執行役員、HPM社の内田知樹社長、クスナディ・ブディマン上級副社長らが出席。
ヒダヤット工業相は「ホンダがインドネシアを生産と輸出の拠点にしようという取り組みへの関与を続けていく」と説明。小林氏は「東南アジアで最大の自動車市場であるインドネシアは、ホンダの世界展開の中で非常に重要な位置付けとなっており、インドネシアをタイとインドに並ぶ生産拠点、アジア・オセアニア地区への輸出拠点にしていきたい」と語った。
内田社長は声明で「昨年は日本とタイの災害による部品供給の制限で最大限の結果を収めることができなかったが、われわれはホンダ製品への信頼と需要は変わらず高いと信じている」と強調した。
会見では全国のディーラーの数を現在の八十八から二〇一四年までに百五十へ拡大するとの方針も示した。