「投資が引っ張る経済に」 各機関との対話に奔走
ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)理事長として、各機関との対話に奔走した三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店長の勝田祐輔さん(55)が2月中旬で日本に帰国する。4年以上にわたった任期を振り返り「インドネシアはポテンシャルの高さに対して、金融の規模が小さいことがボトルネックになっている。外資系の銀行として少しでも改善に結びつけ、貢献したかった」と語った。
勝田さんは2013年12月、ジャカルタ支店長に着任。当時のインドネシアは国際協力銀行(JBIC)が同年発表した中期的(3年程度)有望事業展開先国・地域で1位に輝くなど、日本企業の期待値が高かった。「大きな市場の中で、銀行としてもいろいろな仕事ができる」と期待して業務に臨んだ。14年以降は経済が停滞した時期もあったが、現在の為替相場や金利は落ち着いている。長期国債に対する格付け機関の評価も着実に上がってきた。
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権の発足時期から現在までのマクロ経済を見てきた勝田さんには「消費に引っ張られている構造から、社会資本を整備して産業力を高め、投資がけん引する経済にシフトしていく方が望ましい。銀行はそれを支える黒子になるべきで、ビジネスチャンスにもなる」という一貫した考えがある。国営建設や国鉄(KAI)向けの融資も積極的に展開してきた。
現在、インドネシアには約700人の行員がいる。家族参加型のイベントも開催し、団結を強めた。企業活動の役に立つ銀行として、「マーケットの深化が進むインドネシアで今後も共に成長していく」ことを期待する。
■広い国土を旅行
17年4月、JJC理事長に就任した。インドネシア商工会議所(カディン)、経営者協会(アピンド)、韓国商工会議所、米国商工会議所などと連携し、投資調整庁(BKPM)など各機関と対話を進め、投資環境改善に努めた。
同年12月にはアピンドとの間で投資、貿易、ビジネス面で協力関係を深めていく内容の覚書を結んだ。「JJCだけでなく、他の団体に共感してもらいながら力を合わせ、政府に対し声を上げていった方がよいと思う」と話す。
勝田さんが行員にインドネシアの特徴を聞かれたときの答えは「成長」、「ホスピタリティー」、「多様性の中の統一」だった。
友人や家族と共に、休みを使って広い国土を旅行した。北スマトラ州のトバ湖、パプア州ワメナ、スマトラ島とジャワ島間のスンダ海峡のクラカタウ火山など多くの地域を訪れ、多様性を体感した。
東カリマンタン州のマハカム川を上ったのが初めてのレバラン(断食月明け大祭)休暇旅行。「そのときに(同州の)バリックパパンからサマリンダまで、バスで行った。17年に、同じ区間のカリマンタン初の高速道路(バリックパパン〜サマリンダ間)建設向けの融資契約を結んだ時はうれしかった」と感慨深げに振り返った。(平野慧)