5島からヒーロー集結 8月連載開始の国産漫画 「一つの国と表現したい」 小学館アジアが共同制作
ジャワ、スマトラなど五つの島から集まったヒーロー5人が悪の組織と戦うインドネシア国産漫画「NUSA・V(ヌサ・ファイブ)」がファンの注目を集めている。3年前にインターネットで公開され、アクセス集中でサーバーダウンを起こすほど人気を博したヒーロー戦隊漫画を原型に、作者の売れっ子漫画家スウェタ・カルティカさん(31)と、小学館の子会社・小学館アジア(本社・シンガポール)が共同制作し、漫画雑誌で8月から連載を始めた。
ヒーロー5人は赤、青、黄、緑、紫の衣装をそれぞれ身にまとい、5島土着の動物の特徴を備える。
赤を基調としたデザインの主人公はジャワ出身で、国鳥ジャワクマタカをモチーフにした槍使い。黄は元JKT48のガイダ・フェリシャさんがモデルになったスマトラ出身の女性キャラで、相棒のトラと共に戦う。同じく女性キャラでスラウェシ出身の紫はウシ科のアノア、緑はカリマンタン出身でオランウータン、青はパプア出身でノコギリザメをそれぞれモチーフにしている。
スウェタさんは、出身などの異なるヒーローたちが協力して悪と戦う物語を通して「インドネシアは島ごとに離れ離れのように思えるが、一つの国なんだと表現したい」と話す。
現在、連載を3本抱えている売れっ子漫画家のスウェタさん。
線の引き方や表情の描き方は「スラムダンク」で知られる井上雄彦氏を、ストーリーや世界観設定は「MONSTER(モンスター)」や「20世紀少年」の作者、浦沢直樹氏を参考にしているという。
ヌサ・ファイブには小学館アジアがアイディアやアドバイスを提供。小学館本社の漫画編集者も協力し、国内の青年層を主な対象にしてきたスウェタさんの作品を、少年層や他国の読者にも受け入れられるよう仕上げた。
小学館アジアの加治屋文祥社長は「現地のクリエーターと一緒に仕事をすることで、どんな作品が好まれるかなど、ローカルな事情を理解できる」と語り、今後のインドネシア人作家との共同制作にも意欲を示している。
ヌサ・ファイブを連載しているのは、隔月発行の漫画雑誌「リオン」。10月9日発売の号で、2話目まで公開されている。第3話が掲載予定の次号は12月上旬に発売予定。(大野航太郎、写真も)