燃料値上げで攻防 「反対勢力が政府転覆」 ユドヨノ政権がけん制
四月一日に実施予定の石油燃料の補助金削減を控え、ユドヨノ政権に揺さぶりをかけようと、政党間の駆け引きが活発化している。党幹部の汚職騒動で支持率低下に苦心する与党・民主党は、二〇一四年の国政選挙に向け、低所得者層対象の現金支給政策で国民の不満解消を図る一方、国民の政権不信を高める好機とばかりに反対勢力が大規模デモ動員を計画しているとして、「政府転覆を画策している」とけん制するなど攻防が繰り広げられている。
民主党幹部のラマダン・ポハン氏はこのほど、補助金付燃料の値上げに絡み、ウィラント元国軍司令官の野党ハヌラ党がユドヨノ政権の転覆を画策していると指摘。個人名は挙げなかったが「ある場所で謀議を行ったとの情報がある。近く燃料値上げ反対を訴える大規模デモを行う計画を立てている」と述べた。
これに対し、ハヌラ党のアクバル・ファイサル議員は政府転覆のうわさを否定。「ナザルディン被告ら元民主党幹部の汚職事件が連日大々的に報道され、政権の支持率低下を引き起こした同党が、国民の関心を逸らそうと話題作りに躍起になっているだけ」と反論した。
ウィラント同党党首は、スハルト政権末期に「クーデター」を実行する権限をスハルト元大統領から移譲されたが、実際には行使しなかったと説明。民主化を経て、憲法に反する動きには賛同できないと述べた。
ゴルカル党のアブリザル・バクリー党首は、政府転覆のうわさは「関知していない」と述べ、民主党と連立を構成する政党として「政府の政策を支持する」との立場を表明。補助金削減が不可避ならば、削減された予算の効率的運用を熟考し、貧困層支援とインフラ整備に充てるべきだと強調した。
これに対し、ユドヨノ大統領の側近の一人でもあるジョコ・スヤント政治・法務・治安担当調整相は「政府転覆のような動きがあるとしたら、反民主的と言える」とけん制。しかし、抗議デモの参加者が何人になろうと、整然と実施するのであれば許可するとの方針を表明した。
■国会で根強い反対
国会では、民主党やゴルカル党、国民信託党(PAN)が政府の補助金削減案に賛同。連立与党を形成する福祉正義党(PKS)のほか、野党の闘争民主党(PDIP)、グリンドラ党、ハヌラ党の小政党は反対している。
PKSのアニス・マッタ幹事長は「無駄な公費の節減徹底など、財源確保は二年前から準備できたはず」と政府の無策ぶりを批判。一世帯当たり月十五万ルピアの現金支給策について「国民に負担を強いる政府がサンタクロースになりすまし、選挙に向けてキャンペーンを展開するのが目的」と一蹴した。
グリンドラ党のアフマッド・ムザニ幹事長は、現金支給対象者は七千万人のみで、政府の支援を必要とする一億三千五百万人の低所得者の半数にしか行き渡らず、不公平感が生じると警告した。
政府の補助金対象となっていた一般向けのプレミウム(レギュラーガソリン)は、リーマン・ショック後の二〇〇八年十二月、今回予定される価格と同じ六千ルピアに引き上げられたことがある。この際、全国各地で数千人規模の抗議デモが行われたが、大きな混乱は回避。同時に全国で低所得者層対象の現金支給が実施され、翌年の国政選挙で民主党は大躍進を遂げ、ユドヨノ大統領は再選を果たした。