産地直送野菜に支援 JICA 品質・流通改善へ
国際協力機構(JICA)がインドネシア農業省と共に西ジャワ州の農家に技術協力し、高品質な農産品の生産と流通システムの改善を支援する事業を進めている。イオンモールBSDシティーでは、同事業で収穫された野菜や果物を販売するイベントを実施している。安価で新鮮な産地直送品が店頭に並ぶ。大手スーパーなどでは、日本品種のニンジンなどが注目を集めている。
同事業は2016年3月から20年2月にかけて実施する。西ジャワ州のチアンジュール県、ガルット県、ボゴール県、スカブミ県、バンドン県、西バンドン県の計30の農業グループや企業が対象。ニンジンやトマト、ジャガイモ、パプリカ、クリスタル・グアバなど野菜や果物13品目の栽培を支援している。
新たに日本の品種を栽培しているほか、既存の農作物の品質向上のため、農薬の使用量削減や適した肥料の使用、害虫対策など、日本の農業技術を取り入れた栽培方法を指導する。スーパーや飲食チェーン店などが、それぞれ定める規格を満たせる農作物の生産性を高めることを目指す。
同事業の西村勉リーダーは「地元の配送者、トレーダー、市場、サプライヤーなど多数の仲介業者を経てスーパーまで運ばれてくることや、種の輸入が難しいことなどが課題。また規定された基準を満たす高品質のものを効率良くより多く作ることで、高品質だが安い商品を広めていきたい」と話す。
事前調査で日本のニンジンを求めるチェーン店などが多かったことから、チアンジュール県パチュット郡に農地を持つ農業グループ「ウタマ」は、日本品種のニンジン「黒田」の栽培を始めた。インドネシア産よりも太く形や色が良く、料理にも使いやすいという。
また、新たに約3千平方メートルの土地に種をまいたばかりで、12月末に収穫後、1週間当たり500キロをサプライヤーを通し、大手スーパーなどに卸す。小売り大手トランスマート・カルフールにも卸すため、11月にはさらに約4千平方メートルで栽培する予定という。
ガルット県の農地では、大手菓子メーカーカルビーと協力し、インドネシア農業省の研究所で作られた種を利用した加工品用のジャガイモの栽培・調査が行われている。
■モールで直売も
バンテン州タンゲラン県のブミ・スルポン・ダマイ(BSD)シティーのイオンモールでは29日まで、農業省と共催で直売イベントを実施。同店初の試みで、直売コーナーには傷が少なく色つやの良い野菜や果物が並ぶ。
同モールを管理・運営するAMSLインドネシアの三野剛ゼネラルマネジャーは「大量生産・消費の流れにあり、昔ながらの果物を食べる機会が減っている。インドネシアの食文化を見直し、お客さんの選択肢を増やしたい」と話した。
会場で色鮮やかな3色のパプリカを販売している西バンドン県チサルア郡に農地を持つ「デワ・ファミリ」は5年間、和食チェーン「ホカホカ・ベントウ」に卸してきた。出荷量は1週間当たり1トン。
農地ではパプリカの実に傷をつけてしまう害虫アザミウマによる被害が大きく、スーパーなどで規格を満たせるのは現在、全体の5〜6割。残りはより安い価格で伝統市場に卸している。
同事業では乾期と雨期に分け年2回、農作を実施。現在は雨期の農作業に入ったばかり。
栽培する品目は同じだが、トマトが雨に当たらないよう雨除けを使うなど栽培方法を工夫する。収穫は年明けから2月ごろになり、収穫後には商談会を開く予定という。(毛利春香、写真も)