地盤沈下対策を支援 JICA 東京都の知見生かし イ側と合意文書に署名
国際協力機構(JICA)がジャカルタ特別州の地盤沈下対策を支援することが決まり、協力の合意文書が27日、署名された。地盤沈下を克服した経験を持つ東京都の知見を生かし、深刻化するジャカルタの沈下抑制を目指す。
特別州政府は昨年3月、東京都の専門家らを交え、地下水の利用規制や代替水源の確保などの対策を協議。その後、インドネシア側からの要請を受け、今回の協力合意に至った。
合意書には、JICAインドネシア事務所の原田徹也次長と公共事業・国民住宅省のイマム・サントソ水資源総局長、特別州とエネルギー鉱物資源省、国家開発計画省(バペナス)の関係者が署名した。
協力プロジェクトは年内に始まる予定で、実施期間は3年間。日本から専門家を派遣して、まずは地下水の利用状況や沈下の進行具合を調査し、地下水の利用規制強化や代替水源の確保に役立てる。JICAはバンコクでも同様のプロジェクトを実施して成果を出しており、今回の協力にも期待がかかる。
東京都では工業用水などで地下水の利用が進んだ高度経済成長期、最大で年間24センチ(1968年)の地盤沈下を記録したが、対策を施し、70年代には沈下が止まった。
当時対策に当たった専門家らも今回、ジャカルタ特別州のプロジェクトに参加する計画という。
JICAの水資源政策専門家、早川潤さんは「地盤沈下が起きているということを、(地下水の利用者に)認識してもらうことが大事」と話し、利用者への啓もう活動にも取り組むとしている。
ジャカルタ特別州で特に地盤沈下が著しいのは北ジャカルタ区で、過去40年で最大4メートル、年間平均10センチのペースで沈下が進んできた。地下水の過剰なくみ上げが主因とされ、洪水が発生しやすくなる問題も起きている。井戸掘削や地下水の利用に許可が必要だが、実際にはオフィスビルやショッピングセンターなど州内各地に、無許可で掘られた違法な井戸が多数あるとみられている。(木村綾、写真も)