軍事協力再開で合意 大統領豪訪問 経済連携協定、年内締結へ
25日からオーストラリアを訪問中のジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は26日、シドニーで、ターンブル豪首相と共同会見を開き、軍事協力を再開することで合意したと発表した。豪軍の教材にインドネシアを侮辱する表現が入っていたとして、ぎくしゃくしていた関係の修復を印象づけた。包括的経済連携協定(CEPA)については、年内合意を目指す方針で一致した。
ジョコウィ大統領とターンブル首相は26日早朝、シドニーのロイヤル植物園周辺の遊歩道を、通訳を交えず2人で30分ほど散歩した。ジョギング中の通行人と握手する一幕などを公開し友好ムードを演出した。ジョコウィ大統領が公務としてオーストラリアを訪問したのは初めて。
オーストラリアとの関係では、同国の軍訓練施設でインドネシアの国家5原則パンチャシラを侮辱する教材が見つかった。侮辱内容がパプア独立を支援する内容だったとの見解もあり、軍事協力が停止され、関係がぎくしゃくしていた。
これを受け、両首脳は一時停止していた軍事協力を全面的に再開する方針を発表。南シナ海問題をめぐっては、国際法の順守が重要との認識も共有した。
一方で、ジョコウィ大統領はターンブル首相との会談前に有力紙オーストラリアンの取材に、南シナ海問題で両国間の枠組みで合同パトロールを実施することを示唆していたが、声明で言及はなかった。
専門家は同紙に「フィリピン周辺のスールー海での合同警備を実施する可能性はあるが、(中国との関係を踏まえ)南シナ海警備で協力する可能性は低い」と分析している。
経済分野では、両国間の貿易を拡大させるため、年内に包括的経済連携協定(CEPA)を締結することで合意。インドネシア大統領府によると、ジョコウィ大統領は製紙事業やパーム油の非関税障壁の撤廃を期待する声明を公表した。
それ以外の分野で教育や観光の側面で両国関係が強化できると指摘。昨年だけでオーストラリアからのバリ島の訪問人数は100万人に達した実績や、インドネシアからオーストラリアへ留学する学生が多い現状に触れ、今後さらに伸ばせる分野と強調した。
25日夜にはオーストラリアの経営者とビジネス会合を開催。大統領はジャカルタ特別州知事選に言及し、「(投資環境を考えるうえで)政治状況に課題はある」と言及しつつ「4月19日の(2候補による)決戦投票が終われば安定するだろう」との見解を示した。
大統領は昨年11月にオーストラリア訪問を予定していたが、アホック・ジャカルタ特別州知事のコーラン侮辱発言への抗議活動が大規模化したため、急きょ訪問を延期していた。
両国関係は、軍事協力の停止以外にもたびたび関係がこじれている。最近ではインドネシアでのオーストラリア人の麻薬密輸に対する死刑執行や、豪海軍が現金を渡し難民をインドネシア領海に追い返した疑いなどが両国政府関係者間で取り沙汰された。(佐藤拓也)