ウナギ稚魚養殖し日本へ 岡山のジャパンマリン、バンドンで 村上海外事業部長に聞く
陸上でのウナギ養殖設備の開発、販売を手掛けるジャパンマリンポニックス(本社・岡山市)の西ジャワ州バンドン市のインドネシア教育大(UPI)における稚魚養殖事業が今月後半から始まる。同社の村上善昭海外事業部長(44)に今後の展開を聞いた。
村上部長によると、同社の岡山市内の自社工場ではインドネシア進出が決まる前から、ジャワ島に多く生息するビカーラ種を養殖している。ニホンウナギの数が減り高騰していくなかで、次に主流になるのがビカーラ種だと考えたからだ。「ビカーラ種についての研究は相当進んでいる。インドネシアのウナギは身が固いと言われているが、育て方次第で変わる」と自信を見せ、「ニホンウナギより安価で、設備で育てた日本品質のウナギが日本国内に多く流通することも考えられる」と今後の可能性を話す。
陸上での養殖のメリットについては、海上に比べ自然災害の影響をほとんど受けず、病原菌の流入による稚魚の減少も比較的防げる点だと説明。温度管理もできるため、年間を通して安定的に生産できるという。
弱点となるのは電気代がかかることだが、効率的に水を循環させるようにポンプを改良した。成長した状態まで育てる事業についても地場企業や日系企業から提携のオファーがあるが、当面はUPIで養殖した稚魚を日系企業や地場企業に販売する。
年内に現地法人を設置する見通しで「高原地帯のバンドンで成功することは、どこでも養殖可能だと示すことにもなる」と意気込む。
日本全国で50基以上の設備を設置しているネットワークを生かし、設備を使用する地場企業が日本にウナギを売り込むビジネスをサポートすることを検討している。
また、4月からは国際協力機構(JICA)の案件でインドネシア全域において、陸上でのウナギ養殖技術の基礎調査を行う。各地の土壌や気候などを調べ、関連業者や政府関係者のヒアリングにあたる。
同社は岡山市内に研究所を設立し、ウナギ以外のキジハタやチョウザメなどの養殖技術の研究も進める。インドネシアでのハタ科の魚や、インドネシアやマレーシアでしか捕れない魚の研究も進める「海外展開を見据えた研究所」だという。
「当社は研究開発を8割と位置づけており、今後も飽くなき研究を続けていく」と語る。
海外展開は具体化しており、ミャンマーで設備の導入の検討をしている日系企業もあるという。
村上部長はインドネシア事業での希望として「うなぎ専門の飲食店も出したい」と話し、「インドネシアの資源を有効に活用して産業を促進させ、安くておいしいうなぎを日本に流通させるお手伝いもできる、ロマンがある仕事です」と笑った。
同社は鳥取県境港市に設備を設置する際、マイクロ投資の組成・販売を行うミュージックセキュリティーズと連携して個人から出資を募るファンドを立ち上げ、出資者にウナギのかば焼きを毎年送付するユニークなビジネス手法をとって話題を集めてきた。(平野慧、写真も)