段ボール店にんまり 路上販売に大量需要 好景気下の流通支える 企業移転、引越し、商品発送‥
「段ボールがあふれている」。中古の段ボールを路上販売するテントが並ぶ中央ジャカルタのワヒッド・ハシム通り。商売歴二十年の店主エコさん(五四)は「会社の引っ越し、商品の発送。需要が増え続けている」とにんまり。経済成長が好調なインドネシアでは段ボールの製造量が増加し、急拡大する流通の現場を下支えしている。使い終わった中古品が大量に工場や卸売り業者から発生するため、路上店の取り扱い量も増える一方だ。(岡坂泰寛、写真も)
お昼ごろ、たたまれた段ボールがトラックに山積みにされて運ばれてきた。目抜き通りに交差する通りで運転手兼販売スタッフのユスフさん(三五)は荷台に二重に被せられたビニールシートを取り、一つ一つを検品。段ボールにはさまざまな印字がされており、工業団地が集まる「チカラン」(ブカシ県)や「フロム・タイ」などの地名や、「サンプルナ(たばこの銘柄)」「電化製品」のほか、日系企業の社名も多数あった。
通りを行き交う人々の目に付くよう、さまざまなサイズの段ボールを組み立てた状態で高く積み上げる。段ボールの販売額は大きさによって五千ルピア(約四十円)から二万五千ルピア(約二百十円)。タンゲランの段ボール卸売業者から販売価格の約七割の価格で仕入れている。ユスフさんの店では、一日で五百箱売れることもあり、客の主な用途は会社や住居の引っ越しのほか商品の発送がほとんどという。
ユスフさんによると、卸売業者は工場や企業を回り、使い終わったり、余ったりした段ボールを安く集めており、多くの業者が工場が集まる地域に拠点を構えているという。
「店を始めた二十年前、同業者はほとんどいなかった」。スハルト政権時代の一九九一年に店を始めた店主のエコさん。店を構えるワヒッド・ワシム通りでは、自家用車やタクシーで店に横付けし、積めるだけ積んでいく客の姿も多く、販売量も収入も順調に伸びていると話す。西ジャカルタのコタにも同じようなビジネスをしている地域があり、ジャカルタ各所でも今後増えていきそうだ。
中古品に混じって未使用の新品も販売する。「業績が好調な企業から一万箱の注文を受けると、段ボール製造業者は一万五千箱を作って用意しておく。追加注文があったときのためにね。それらが不要になったとき、自分たちの小売店に『商品』が流れてくるんだ」とエコさんはからくりを明かす。客も用途によって新品と中古品を選び分け、特に製品の発送に使う業者は未使用の段ボールを多く買っていくという。
路上の段ボール売りの一番の大敵は雨。午後三時、突然、雨が降り始めた。通りに並べた商品をいそいそとたたみ、奥のテントの下に避難させる。数十分して雨雲が去ると、ふたたび段ボールを組み立て、高く積み上げる。「面倒くさいけど、売れるから頑張れる」。エコさんはうれしそうだった。