ハンセン病 制圧目指す 早期発見、治療を訴え WHO大使 日本財団の笹川会長
ハンセン病の患者数が世界で3番目に多いインドネシア。病気の制圧や差別解消に向けた取り組みを続ける保健省は、2020年までにすべての州・県で「1万人当たりの患者数1人未満」の目標を掲げる。世界保健機関(WHO)のハンセン病制圧大使を務める笹川陽平・日本財団会長(77)はこれまでに15回以上来イ、同省と連携して早期発見、治療を訴え続けている。
ハンセン病はらい菌による慢性感染症で、主に皮膚や神経が侵される。感染力は弱く、現在では特効薬により治る病気となった。
インドネシアでは00年、1万人当たりの患者数が1人未満(全国平均)になり、WHOの「公衆衛生上の問題としての制圧」基準に達した。
しかし、その後15年間、新規診断患者数はほぼ横ばい状態。WHOによると、ハンセン病と診断される人は、インド、ブラジルに次いで多い年間1万7202人(15年)で、現在13州で1万人当たりの患者数が1人を超えている。
インドネシアを15回以上訪れ、制圧に取り組んできた笹川氏は、対策の現状を「結核やエイズ、マラリアというと皆ぴんと来るが、ハンセン病は患者数が相対的に少なく、予算的にも後回しにされがち」と説明、取り組みの遅れを指摘する。
笹川氏は12月中旬にも、制圧の進捗(しんちょく)状況の報告会に合わせて来イ。ハンセン病対策についてニラ・ムルック保健相と会談したほか、西スマトラ州パダン・パリアマン県で回復者の状況を視察するなどした。
今は、患者数横ばいの状況を打破するため、早期発見と早期治療に力を入れる。「瞬間的に、患者さんが1万人に1人を超えてもいい。薬を飲めば治るから。どんどん患者さんを発見することが大事」と話す。
ハンセン病は、世界各地で患者が隔離されるなど、長年にわたり差別や偏見の対象となってきた。治療法が確立された今も、差別は根強く残る。
笹川氏は「病気は隠され、表に出てこない。だからどうしても、障害が残る確率が高くなる」と指摘する。
14年にパプア州を訪れた時だった。「10年以上、1人で小屋の中で生活している、孤独な老人を見つけて訪問した。親族が食事を届けてくれるが、届けてくれない時は空腹のまま寝る。そばを通る子どもも大人も一切声を掛けてくれない。そういう隠された状況が各地にたくさんあるのだと思った」
笹川氏は17年も2カ月おきに6回、来イして地方を回りたいという。
「ハンセン病は今は治る病気。子どもの時に発見され、障害が出るまでに治ってしまえば、差別の対象にもならない。正しい啓もう活動が大事です」と話した。(木村綾)