アホック氏を容疑者認定 国家警察 宗教冒とくで立件
国家警察は16日、コーランを侮辱する発言をしたとしてアホック・ジャカルタ特別州知事を宗教冒とくの容疑者に認定し、刑事事件として立件した。今後送検、起訴され、有罪となれば最大で禁錮5年の刑が下る可能性がある。
国家警察はアホック氏を情報・電子取引法(ITE法)違反で容疑者に認定するとともに、出国禁止とした。会見したティト・カルナフィアン国家警察長官によれば、立件をめぐっては、捜査官や専門家の間で意見が分かれた。証拠となる記録映像を押収していることなどから、同氏の身柄は拘束しないという。
これを受け、知事選(2017年2月15日投開票)に再選出馬中のアホック氏は、選対本部で記者や支持者を前に「容疑者認定を受け入れ、法手続きにしっかりと従う」と述べた。裁判で戦う覚悟を示したほか、今後も選挙活動を継続するとしている。
選挙規定によれば、アホック氏は今後も候補者として選挙活動を続けられる。起訴され、禁錮5年以上の刑が確定した場合は、出馬資格を取り消される。同氏は発言が問題になって以降も選挙区回りを続けているが、一部で反対住民の妨害に遭うなど、すでに選挙戦への影響が垣間見える。
地元メディアの報道によると、アホック氏を共闘で擁立したナスデム、ハヌラ、ゴルカル、闘争民主(PDIP)の各党幹部らはいずれも、現時点でアホック氏への支持をおおむね続ける意向を示している。
容疑者認定を受け、ユスフ・カラ副大統領は「アホック氏は法手続きに従う必要がある」、ジョハン・ブディ大統領特別補佐官は「当事者全員が法手続きを尊重しなくてはならない」と述べた。イスラム団体を統括するイスラム学者会議(MUI)最高顧問会議のディン・シャムスディン議長は「公正な法手続きの結果だ」と歓迎した。
キリスト教徒のアホック氏は9月27日、プラウスリブ県を訪れた際、「ユダヤ教徒とキリスト教徒を仲間としてはならない」とするコーランの一節に触れ、「コーランを使って惑わされているから、あなたたちは私に投票できない」などと発言。発言の動画がインターネット上で拡散されると、広くムスリムの反発を呼び、10月6日以降、複数のイスラム強硬派団体らが同氏を刑事告発する事態に発展した。
宗教対立を懸念したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は、アホック氏の捜査に介入しないことを強調する反面、国家統一を呼びかけ、事態の沈静化を図ったが、今月4日にはアホック氏の逮捕を訴える大規模デモが実施され、一部でデモ隊が警官隊と衝突した。
イスラム強硬派団体らは、立件されなかった場合、25日にも大規模デモを行うと主張していた。容疑者認定の発表後、イリアワン警視総監はこれ以上デモを行わないよう呼びかけた。(木村綾)