「再発防止につなげたい」 西村良美さん殺害事件から1年 両親がジャカルタ再訪
「再発防止に努めることが、私の人生を通してできる宿題だと思っています」。2015年9月、南ジャカルタ区テベットのマンション自室で、西村良美さん=当時(28)=が同マンションの警備員に殺害された事件から1年が過ぎた。13日にジャカルタを訪れた良美さんの父、西村健さん(68)はインドネシアの警備会社の安全性を高めるなどし、再発防止につなげたいと力強く語った。
健さんと妻の恵子さん(59)がインドネシアを訪れるのは葬儀の日以来、2度目。事件が発生したマンションの管理会社と警備会社は新しく変わっていた。14日には管理会社のマネジャーと話ができたが、警備員が務めていた会社の関係者は顔を出さなかったという。
健さんは「(以前の警備会社から)事件は勤務中に発生したにもかかわらず、個人が起こしたことで会社には責任がないと言われるなど、あまりにもおそまつだった。再発防止につなげるためにも、事件をきちんと検証してほしい」と訴える。
警備員は良美さんのドアの鍵穴に紙を詰めて開かないようにし、夜に帰宅した西村さんが相談に来るように仕向け、一緒に部屋に入り金を要求、大声を出されるなどしたため殺害した。健さんによると、逮捕された警備員は禁錮15年の判決を受けた。
西村さん夫妻は今回、良美さんの私物が残された事件現場の部屋に入った。健さんは「事件当時の様子を思い出したくなかったが、いつまでも避けているような気がして入った」と話した。恵子さんは机の上に、良美さんに送った手紙の封筒を見つけた。
恵子さんは「(1年前は)薄暗く怖かった廊下が、暖かい色の照明に変わっていたことに驚いた。少しでも対応してくれたと分かり、うれしかった」と話した。
恵子さんは管理会社の女性マネジャーとハグを交わした。「彼女にも一人娘がおり、同じ母親として娘を亡くすことほどつらいことはないと言ってくれた」という。2人は良美さんが使っていたマグカップと手紙の封筒を持ち帰ることにした。「少し気持ちの整理がつきました」
健さんは「インドネシアを憎んだりせず、愛していきたい。嫌いだなんて言ったら、インドネシアが大好きだった良美に怒られそう」と話す。「良美の一番の供養は再犯防止。私たちが死んで良美に会った時に、お父さんとお母さんはこういうことをしたよ、インドネシアも少しずつ良くなったよと伝えたい」(毛利春香、写真も)