日イは「ウィンウィン」 ODAをテーマに講演 会場から厳しい質問も 本清公使
南ジャカルタのブディ・ルフール大学(UBL)で8日、在インドネシア日本大使館の本清耕造公使が、日本の政府開発援助(ODA)をテーマに講演した。同大の学生ら約200人が聴講し、ODAを通じた取り組みや日イ関係について熱心に耳を傾けた。
聴講者からは、日本政府の姿勢やODAの現状について、「インドネシアを支配するつもりなのか」「技術をけちっているのではないか」「汚職の温床になっているのでは」などと厳しい質問が飛んだ。
これに対し、本清公使は「(日イは)ウィンウィンの関係だ」と返答。具体例として、日系企業から現地企業、工場への技術移転や、現地生産部品を8割以上使った車の生産例などを挙げた。
円借款で建設の進むジャカルタ特別州の大量高速鉄道(MRT)についても「日本とインドネシアの企業が協力して進めており、10年、15年後には、インドネシアはMRTを独自に作ることができるようになるだろう」と語った。
講演は、「インドネシアのインフラ建設における日本の役割」をテーマにした公開講義(全5回)の第1回目。午前10時ごろから約2時間続いた。
本清公使は、ODAの目的や枠組み、世界各地で実施されてきたプロジェクトなどを紹介。新たな傾向として「求められるのは『援助』ではなく、政府や民間企業、非政府組織、国際組織などと協力して開発を進められるよう、ODAと民間部門が組み合わさること」と説明した上で、官民連携(PPP)方式の事業や民間資金を活用する案件が増えていることを挙げた。
さらに、途上国の多くが、貿易や投資を通じた持続的な経済成長を重視しており、「人材育成やインフラ整備などビジネスに適した環境整備が大切」と指摘した。
今後、公開講義は15日と29日、11月5日、12日に開かれる。いずれも午前10時開始、会場はUBL。国際協力機構(JICA)や日系企業の関係者が講師として招かれる。
本清公使は03年2月に在インドネシア日本大使館一等書記官、04年1月には同参事官を務めた。13年からは大臣官房会計課長として外務省の予算を管理・執行する職務を担当し、ODA案件の採用に携わった。
日本政府のODA対象国・地域別で、1960〜2014年の援助総額は、インドネシアが388億ドルで1位。(毛利春香、写真も)