BRIサット打ち上げ 世界初の銀行保有衛星 離島でもATM稼働
国営大手ラクヤット・インドネシア銀行(BRI)の通信衛星「BRIサット」が18日午前3時(西部インドネシア=ジャカルタ時間)、南米の仏領ギアナの宇宙センターから打ち上げられた。銀行が自前の衛星を持つのは世界で初めて。45機のトランスポンダ(電波中継機)を搭載し、離島や遠隔地でも現金自動預払機(ATM)の稼働が可能になる。
北米大陸に匹敵する東西約5千キロに広がる島しょ国のインドネシアでは、光ファイバーケーブルより通信衛星の方が通信面では効率が良い。同行はインドネシア全土に1612の支店があり、衛星を持つことで、約2万3千のATMを稼働させることができるようになる。
衛星の打ち上げは、当初今月9日の予定だったが、天候不良やロケットのブースター(推進装置)のトラブルで3度延期された。約10日で軌道に到達し、約50日間の試運転期間を経て本格的な運用が始まる予定。
ユスフ・カラ副大統領は19日、ジャカルタ特別州内で同行のアスマウィ・サヤム頭取とテレビ会議を開き、「パプア州メラウケからアチェ州サバンまで支店が点在している。衛星の打ち上げは効果的だ」と期待を込めた。
アスマウィ頭取は、ATMの利用客を暗証番号ではなく、顔で識別するサービスや、モニター上で顧客対応する「ビデオバンキング」などのサービスを拡充していく考えを示している。また、衛星の活用法として全支店にテレビモニターを設置し、相互にやりとりする計画もある。
同行の顧客数は現在5千500万だが、衛星の運用で今後2年間で1千万増やす見込みという。インドネシアで銀行口座を持つ成人の割合は36.1%にとどまっている(世界銀行、2014年調べ)。
衛星への投資額は約3兆3750億ルピア。従来は他社の衛星を使用しており、経費が年間約5千億ルピアに上っていたが、自社の衛星を持つことで約2千億ルピアのコストを削減する。これにより、従来と比較して貸し出し増を見込める可能性もある。
同行は23機のトランスポンダを使用し、4機は国に提供する方針。衛星は欧州のロケット運用会社アリアンスペース社のロケットで、東経150.5度のパプアニューギニア上空で静止衛星となる。寿命は17年間と推定。南ジャカルタ・ラグナンとバリ州タバナン県に設置される衛星をコントロールする施設で管理される。(平野慧、11面に関連)