「中小企業魂ここにあり」 共同受注、製品開発も 「町工場の会」
ジャカルタ特別州の東、西ジャワ州ブカシやカラワンの工業団地群に工場や事務所を置く日系中小企業で連携の輪が広がっている。大手メーカーの系列に属さず、頼まれたらどんな注文でもこなす「製造業の縁の下の力持ち」、中小企業の経営者・技術者が集まり、喜びと悩みを共有しながら協力して成長していく集団を目指す。名付けて「町工場(まちこうば)の会」(会長・梅田大ウメダ・ファクトリー・インドネシア社長=34)。単なる情報交換や悩みの解消の場を超え、共同で注文を引き受けたり、技術を駆使して製品を作る組織への転換を目指す。最近の動きを追った。
現在の「町工場の会」の参加メンバーは、39社49人。MM2100、東ジャカルタ工業団地(EJIP)、カラワン工業団地(KIIC)、グリーンランド国際工業センター(GIIC)、デルタ・シリコン工業団地などブカシやカラワンに拠点を持つ中小企業が中心だが、ジャカルタ特別州やバンテン州タンゲランの企業なども参加する。
参加企業の業種も、部品や機械を設計する設計会社や、鋼板を切ったり折り曲げたり、削ったりして注文通りの金属製品を作る金属加工会社や、その工場だけでしか使われない特注の専門機械(専用機)を製造する機械メーカーなど多彩。「材料屋から設計屋、加工屋まで注文の品を作るのに必要な全ての業務の企業が参加している。いないのは塗装屋くらい」と会長の梅田さんは話す。
会員は、大量生産型のティア1(1次下請け)、ティア2(2次下請け)と呼ばれる大企業の系列会社とは異なり、注文数が少なくても注文主の要望に応える「多品種少量生産」型のメーカーとその周辺の関連企業に絞っている。
会は、2013年8月にKIICに工場を持つ田中鉄工所(本社・岡山県総社市)の現地法人・田中マシナリーの技術者だった初代会長の岡本典夫さんの呼び掛けで発足、月1回のペースで例会を開き、企業数も一時60社を超える規模に膨らんだ。
半面、会の設立趣旨と異なる会員への販売などの目的で参加するケースなどが目立っていたことから、昨年10月に「会の趣旨を再確認し、会員を絞り初心に戻り再スタートした」(梅田会長)という。
会員の年齢層は20代から50代まで幅広いが、親の代から続く日本の中小企業経営者の血を継ぐ30代の若手経営者が中心となっている。
たとえば、幹事を務める奥野雄大さん(30、昭和ワークス・インドネシア社長)は、4代続く神戸市長田区にある大正8年(1917年)創業の老舗木型メーカー、昭和製作所の創業者一族の長男。スポンジからアルミまで柔素材の研削を得意とし、主にシートなど自動車用内装の開発段階での一品ものの試作品を制作、これを元に部品メーカーが金型を造りシートを大量生産する。
梅田会長自身も埼玉県行田市に本社を置く機械部品製造の梅田工業の現経営者の次男坊だ。
事務局長の大屋敦志さん(34、大松精機グループ=本社・岡山県倉敷市=の現法ダイショープレシジョン社長)は今後の方向として、共同受注と、会員の技術力を結集した製品の開発をあげる。現在も注文を受けた企業が会員企業に個々に相談して、問題を解決した例は少なくないが、今後は、会が窓口となって注文を受ける仕組み作りを検討していく。
さらに、テレビドラマにもなった池井戸潤の町工場奮戦小説「下町ロケット」のように「会員が協力して皆がびっくりするものを作りたいですね。忘年会で私が提案したロボットは拒否されましたが」と大屋さん。町工場の成功が、最終的に「インドネシアの製造業の底上げにつながる」と期待をかける。
「町工場の会」連絡先はメールmachikouba.network@gmail.comまで。(西川幸男、写真も)