アチェ津波の2倍超 森林火災・煙害 経済的損失221兆ルピア 世銀推計
世界銀行は15日発表したインドネシア経済の「四半期評価」の中で、森林火災と煙害によりインドネシアは6〜10月の5カ月間だけで国内総生産(GDP)の1・9%に相当する221兆ルピアの経済的損失を被り、成長率を押し下げる要因になった、と指摘した。
損失の規模は、農業生産の減少、環境破壊での被害、工場の生産停止、社会インフラ破壊による輸送負担の増加、観光産業への打撃、輸出の減少による損失のほか、健康面や教育面での子どもの被害などを加えた広範囲なもの。
損失の規模は2004年末に起きたスマトラ島沖地震に伴う大津波で大きな被害を受けたアチェ州の再建費用の2倍以上に当たる。
10万ヘクタール以上の森林が焼失した州だけでも、南スマトラ州、カリマンタン島4州、パプア州、リアウ州、ジャンビ州の8州にのぼり、全国ではバリ島の4・5倍の規模にあたる261万ヘクタールの森林が焼失したと指摘した。
部門別の損失が最も大きかったのは農業部門で、商品作物、食料作物の被害の合計で66・45兆ルピアに達したほか、環境面での損失、林業の損失がそれぞれ50兆ルピアを超えた。
地域別では、最も損失が大きかったカリマンタン島4州では、第3四半期(7〜9月)の域内総生産が季節調整後の年率換算で前四半期比1・2%縮小、パプア州も全国平均を大きく下回る前年同期比0・6%の伸びにとどまったと推計した。
世銀は、森林火災のかなりの部分がパーム農園造成の目的で、「人為的に引き起こされたもの」とした。背景には、政府が進めるパーム農園の大規模化推進政策があるとし、環境に優しい開発政策への転換を求めた。(西川幸男)