MRTに期待 南タンゲラン市、後継か新風か デポック市
9日に初めて実施された統一地方首長選。過去には地域によっては支持者同士の対立による混乱も生じた。今回からの同時実施により、有権者たちは大方、冷静に自分たちの期待を一票に託した。バンテン州南タンゲラン市と西ジャワ州デポック市で市民の声を聞いた。
再選をほぼ確実にした南タンゲラン市の現職市長アイリン・ラフミ・ディアニ氏(39)は今回の市長戦で、首都圏近郊を生かす交通面のインフラ開発と、人口増加に対応する社会保障面整備を柱に掲げた。
アイリン氏は同市とジャカルタ間を結ぶ大量高速鉄道(MRT)の誘致を強調する。家族で投票所に訪れたネリー・ファンさん(45)は「渋滞も年々ひどくなってきている。首都圏との連結性に期待したい。MRTをぜひ建設してほしい」と熱を込めた。
市長戦では、アイリン氏の夫の汚職問題に端を発し、各候補の汚職への対応も注目された。
タンゲランなどを中心に報道するジャワポス・グループのニュースサイト「サテリト・ニュース」の記者ウイス・アディ・デルマワンさんは「候補者は3人とも汚職を撲滅する姿勢が目立った。有権者には、どの候補も政策が横並びに見えたかもしれない」と分析した。
投票所でアイリン氏優勢の開票結果を見届けたジョハネス・ウィジャヤさん(42)は「正直言って対抗馬の2人はあまり知らない。(アイリン氏が)汚職に関与しているか分からないが、再選するのであれば職務を全うしてもらいたい」と語った。
アイリン氏は同日、南タンゲラン市の自宅で行った勝利宣言で「私と副市長のベニャミンを信じてくれた有権者に感謝し、新たな南タンゲランをつくっていきたい」と抱負を語った。
デポック市は、ヌル現市長が10年間(2期)の任期を全うし、新市長の席を2組が争う戦いとなった。
現副市長のモハマド・イドリス氏(54)が「自らが相応しい後継者」と市長に立候補し、プラディ・スプリアトナ氏と組み、従来どおり野党連合の福祉正義党(PKS)とグリンドラ党から支持を得た。
一方、闘争民主党(PDIP)やナスデム党の国会与党連合は、ディマス・オキ・ヌグロホ、ババイ・スハイミ両氏の新候補を擁立し、PKSの牙城崩しを図った。
有権者からは、これまでの市政が安定していたとして、後継者イドリス氏の副市長時代の実績を評価する声があった一方、対抗馬の若手候補に期待する声も聞かれた。
地元で生まれ育ったシアハマンさん(64)はイドリス氏に投票し「現在の市政は住民たちが安心して暮らせる環境を作ってきてくれた。PKSは良い政党だと、多くの住民たちが好印象を持っている」と語る。
ガソリン販売店を営むアリアさん(42)もイドリス氏に投じた。「個人経営者たちがもっと挑戦できるよう、市がもっと支援してほしい」。2年前に市内でレストランを開店したが、その後は経営不振でたたんだ。「経営者への支援は街の発展につながり、それをイドリス氏は実現できると信じている」と期待を込めた。
同市ポンドックチナに住む主婦ティハマさん(60)は、民間企業出身のディマス氏(37)に一票を投じた。「これからのデポック市政の担い手として選んだ。若い力で今よりもっと良い地域にしてほしいから」と市政に新風が吹き込まれることを望んだ。(山本康行、佐藤拓也、写真も)