国会議長関与に照準 国会査問委が始動 フリーポート裏交渉疑惑
米系鉱山フリーポート・インドネシアの契約更新をめぐる裏交渉に関与した疑いで、国会査問委員会はスティヤ・ノファント国会議長(ゴルカル党)の審理に向け動き出した。重度の倫理違反が認定された場合、議長解任などの懲戒処分もあり得るが、野党連合は審理開始を阻止する構えを示している。一方で閣僚の関与疑惑も浮上し、閣内の足並みも乱れており、政財界の「マフィア」の関与究明は難航しそうだ。
スディルマン・エネルギー鉱物資源相は16日、「国会議員の倫理に反する行為」としてスティヤ氏の喚問を査問委に請求。証拠として約11分にわたる裏交渉の音声記録を提出した。
これに対し、各政党代表で構成する国会査問委の野党委員は通報者が閣僚であることが国会内規に反すると問題視。音声記録の証拠採用の可否などの議論を経て、最終的に審理対象とすることで合意した。
査問委が科す懲戒処分は三つあり、最も軽い処分が口頭・文書による注意勧告で、その次が議長解任、最高が議員解任。スティヤ氏は、訪米中の米大統領候補のトランプ氏との会談について倫理違反と認定されたが、注意にとどまった。
査問委の計17委員のうち、現時点で議長続投を支持するのは野党連合の9委員で、解任を訴える連立与党は8委員。各党は委員を入れ替えるなど、罰則を決める採決に向けた動きを活発化させている。
査問委は内容に応じて公開審理にするとの方針を発表した。ガジャマダ大学の経済学者ファフミ・ラディ氏は「査問委が裏交渉における全関与者の役割を明らかにし、倫理違反と認定し罰則を科すべきだ」と主張。その後、正副大統領がスティヤ氏を名義の不正利用、フリーポートを贈賄未遂の疑いで警察へ通報し、刑事責任を負わせるべきだと訴えている。
スティヤ氏の裏交渉で名前が言及され、関与が疑われているルフット・パンジャイタン政治・法務・治安調整相は30日、査問委の喚問に応じる用意があると表明。「フリーポート幹部とは公邸なども含め何度か面会しているが、あくまで当時の大統領首席補佐官として協議に応じた」と述べ、同社の契約更新に賛意を示したことはなく、同社の株式を要求したこともないと反論した。
ルフット調整相との確執が指摘されているカラ副大統領は、スティヤ氏やルフット氏の関与追及の急先鋒(せんぽう)として全容究明を訴える。ゴルカル党内で対立するスティヤ氏所属のバクリー派と、閣内で対立するルフット氏の双方に照準を合わせている。(配島克彦)