【火焔樹】 がんばれJKT48!
JKT48のデビューを見て、インドネシアの将来がとても明るいものになるだろうと思った。
十代の彼女たちがステージの上で歌い、踊り、そしてはじける姿を見て私は、年甲斐もなく心踊らせ、胸をわくわくさせながら、テレビにかじりついた。そして不覚にもその雄姿に感動して泣きそうにまでなってしまった。
その理由は、別に私はロリコンでもなければ、彼女たちのプロモーションを行っているわけでもない。インドネシアの若い子は、歌が上手で、音感が良く、楽器をやらせても、踊りを踊らせても、すべてセンス良くこなし、芸能に関する才能はとてもあると昔から感じていた。
大学卒業後は、才能のある子たちをスカウトして、アイドルとして日本の芸能事務所に売り込むような仕事を本気でしようと思ったことがあるくらいだ。しかし、当時のインドネシアでは、まだまだ若い女の子がミニスカートを履いて、人前で歌い、踊るというようなことは、なかなか難しい状況にあった。
インターネットもない時代、テレビも国営の一局しかなく、芸能番組もつまらない高校生の学芸会程度のようで、アイドルという概念さえもなかった。雑誌も少しでも女性の肌が露出しようものなら、発刊禁止処分となり大騒ぎとなったものだ。そんな保守的な状況の中で、私が考えたことを実行するのは不可能に近かった。
紅白歌合戦の舞台で歌い踊る彼女たちに時の移ろいを感じ、目頭が熱くなったというわけである。もちろん、今の社会もそんな保守的な傾向はあるのだが、当時と比較して、彼女たちの出現のみならず、才能あふれる役者、歌手、タレントたちが活躍する今のインドネシアの芸能界は本当に変わった。こんなドラスティックな変化をみているとインドネシアのあらゆる部分の今後の変貌が本当に楽しみだ。
人前では決まって見栄を張る傾向のあるインドネシアのお偉いさんたちがいくら「聞こえのいいこと」(omong kosong)を言っても、体を張ってメッセージを伝え、変化を見せ付ける、彼女たちのあふれるエネルギーやパワーには到底対抗できない。彼女たちは一時のエンターテイナーのみならず、これからのインドネシアを根底から変えていく存在になりうるのである。
まもなく半世紀を生きることになる私にとって、そんな彼女たちは新鮮で刺激的で、年なんぞ関係ないぞとばかり、JKT48のステージを追いかけるプランを立てている。がんばれJKT48!(会社役員・芦田洸)