日中案とも不採用 高速鉄道計画見直し 大統領 「両国に外交的配慮」 「中速鉄道」に変更

 ダルミン・ナスチオン経済調整相は4日、高速鉄道計画を見直す方針を明らかにした。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の意向として、ナスチオン経済調整相が谷崎泰明駐インドネシア大使に伝えた。インドネシア政府は、日本と中国が受注を目指してきた高速鉄道事業のどちらも採用せず、替わりに同区間で時速200〜250キロの「中速鉄道」の導入を目指すことで、再度検討する方針。
 ナスチオン経済調整相は4日、経済調整省で谷崎大使と会談し、高速鉄道の計画案を採用しないことを伝えた。谷崎大使によると、インドネシア政府はジャカルタ〜バンドン間(150キロ)が高速鉄道を採用するほどの長距離区間ではないことと、同事業には政府予算を投入しない政権の意向に沿わなかったことが最終的な見直しの理由と説明した。日本と中国いずれの提案もインドネシア政府が事業の一部を負担する内容だった。
 谷崎大使は「(高速鉄道計画は)前政権からの要望だったため非常に残念だが、大統領が決めたことなので結果を受け止める」と述べた。
 政府当局者によると、ジョコウィ大統領は側近に「いずれかを採用すると、負けた国に恥をかかせる。日中のメンツを守りたかった」と述べ、日中への外交的配慮も見直しの背景にあったことをにじませた。
 ナスチオン経済調整相は高速鉄道に代わり、同区間で「中速鉄道」導入を検討すると表明。同相は高速鉄道よりも10分ほど到着が遅れるが、30〜40%ほど支出を抑えられると述べた。「中速鉄道であれば、日中両国以外にも投資を希望する国が複数ある」とさらなる競争を示唆した。
 日本の提案してきた高速鉄道事業は、ユドヨノ前政権時の2013年に首都圏投資促進特別地域(MPA)構想で合意された事業。ジャワ・スマトラ経済回廊の発展の中心に位置付けた同構想のもと、日本側は官民一体で提案を続けてきた。
 ユドヨノ政権から昨年引き継いだジョコウィ政権はジャワ島以外へ投資を誘致する方針を示し、均一な経済発展政策を掲げる。ジョコウィ政権は高速鉄道事業に政府予算を投入しないと明言していた。
  ■輸出拡大目指すが…
 日本政府は2013年3月、鉄道などのインフラ輸出拡大策を検討する「経協インフラ戦略会議」を設置した。インフラ関係受注額を2020年に約30兆円にするとの目標を掲げ、新幹線輸出はその柱の一つだ。
 日本勢はインドネシアのほか、シンガポールとマレーシア、タイ、インド、米国のテキサス州やカリフォルニア州などの高速鉄道計画で新幹線システムの輸出に向けて活動を続けている。
 今回の中国との受注合戦では、日本案は建設実績や安全面をアピールした一方で、中国案に比べ初期投資の負担の大きさが指摘された。これまでに日本の新幹線の導入が実現したのは台湾のみ。(佐藤拓也)

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