「新幹線有利」の論調 「経験、融資で中国より上」 地元メディア 商業相訪日に同行
インドネシアの主要メディアはこのほど、ラフマット・ゴーベル商業相の訪日に随行し、ジャカルタ〜西ジャワ州バンドン間(約180キロ)に導入を検討している日本の新幹線を取材した。日本と中国が受注合戦を繰り広げる高速鉄道計画への関心は高く、新幹線が培ってきた長年の運営経験や技術を評価。部品の現地調達や安価な建設費、好条件の融資などの面で「新幹線有利」の論調を展開した。
英字紙ジャカルタグローブは6日付の1面全面に新幹線の写真を掲載。「日本が新幹線導入計画を有利に」との見出しを掲げ、2面でも大きく取り上げた。宮沢洋一経済産業相の「日本政府はインドネシアへの高速鉄道計画参入を真剣に考えている」とのコメントを紹介。日本政府が、日本製の新幹線は中国製の高速鉄道より安価だと繰り返し強調し、長年培った運営技術も中国より優れていると主張したと伝えた。
また和泉洋人内閣総理大臣補佐官が「新幹線に使われる部品などはインドネシア国内で調達できる体制を整えていく」と話したことを挙げ、日本の新幹線を導入した方が長期的な国益の観点からもより整合性があると報道。中国製を導入した場合は、将来的に部品調達が中国企業で賄われてしまう可能性が高いとした。
メディア・インドネシア紙は、1面に日中の国旗を並べて「高速鉄道の受注合戦」を詳報した。日本政府が建設費用約6千億円のうち約75%をソフトローン(緩やかな貸付条件の借款)で計画していると紹介。年利0・1%、貸付期間40年で、中国の融資額40億ドル、年利2%、貸付期間25年と比較した上で、「国民の大多数や西ジャワ州知事も日本を支持している」(ゴーベル商業相)と結んだ。
オンライン・メディアのトリブン・ニュースは、日本で北陸新幹線の開業により北陸地方への観光客が増加していることに着目。日本は地方と首都を結んだ新幹線を使う観光振興の経験も豊富なため、日本の新幹線導入とともに地方の観光振興策も享受できるとしている。
高速鉄道計画をめぐっては、最終的な決定権を持つジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が、独立記念日の8月17日に事業計画に関する発表をすると予想されている。
ゴーベル商業相は7日、中央ジャカルタの大統領宮殿(イスタナ)でジョコウィ大統領と面会し、日本訪問の結果を報告。日本の新幹線について、好意的な見解を伝えた。
日本政府は新幹線を導入した場合は、来年から建設を開始し、2021年の営業開始を目指す。ジャカルタ〜バンドン間を36分で結び、運賃20万ルピア程度が想定されている。(藤本迅)