文化広報に奮闘 古巣で意気込み 在マカッサル駐在官事務所 東本真吾所長 【スラマット・ダタン】
「喜んでもらうことが一番の外交」―。今年4月に就任した在マカッサル出張駐在官事務所の東本真吾所長(48)。日本語を学習する若者がいる高校や大学へ積極的に出向いており、「浴衣などの貸し出しや講演活動を通じて、文化広報に力を入れていきたい」と意気込む。
1988年に外務省入省。2年間のインドネシア留学を経て、当時の在ウジュンパンダン総領事館(現・在マカッサル出張駐在官事務所)副領事を3年間務めた。その後はジャカルタの日本大使館に勤務し、初代スカルノを除いたすべての大統領の通訳をした経験がある。
マカッサルは東部インドネシア地域の開発拠点となっており、かつては商都として栄えた。同事務所は77年に総領事館として開設し、2009年1月から日本大使館の下で出張駐在官事務所として機能している。管轄はマルクとパプア両地域を含む東部インドネシアの10州。
現在、南スラウェシ州マカッサルの在留邦人は86人で、管轄地域全体では217人。近年は微減傾向にある。パプア州ジャヤプラに住んでいる邦人もおり、「治安などの情報収集を怠らず、各地域の日本人と密に連絡を取っていきたい」と話す。
約20年前の駐在時と違い、マカッサルでは交通渋滞が発生し、ショッピングモールが建ち並んでいた。反華人的な雰囲気も消え、華人の若者が町中を堂々と歩いていた。中間層が増加し、宅地開発も進んでいた。
スラウェシ島に在外公館を持つ先進国は日本だけだ。「日本とインドネシアをまたいで経済活動をする人たちに、積極的に情報を伝えていきたい」。留学した経験を生かし、インドネシア語で書かれた地元紙の隅々まで目を通すのは朝の日課だ。
ジャワ島外に関心が寄せられる中、豊富な農・水産物や鉱物資源がある東部地域への注目が高まっている。「先進的なビジネスマネージメントの中で付加価値を高めていければ、地元も潤っていく」と話す。優秀な首長による民間投資の呼び込みや中央政府によるインフラ整備が進むことを心待ちにしている。(岡坂泰寛、写真も)
◇東本真吾(ひがしもと・しんご)
1964年、大阪出身。88年に外務省入省。91年に在ウジュンパンダン総領事館(当時)副領事、94年に在インドネシア日本大使館、2000年に在シアトル総領事館に赴任。03年には在インドネシア日本大使館に再び赴任し、05年から在スラバヤ総領事館で首席領事。その後、本省勤務を経て現職。