「大リーガー育てたい」 野球練習施設コーチ 前田夏希さん
南ジャカルタ・クバヨランラマにオープンしたインドネシア初の室内野球練習施設「ザ・ヒット・ファクトリー」(THF)でコーチを務める前田夏希さん(33)。元メジャーリーガーのマック鈴木さんに憧れ、米ロサンゼルスへ単身野球留学した苦労人は「ここから大リーガーを育てたい」と意気込んでいる。
「間違いなくあの人に人生狂わされた」。1990年代、日本のプロ野球を経ずに米野球界で活躍していたマック鈴木さん。その型破りな生き方に衝撃を受けた。
当時前田さんは三重県の中学生だったが、全国大会どころか、近畿大会にも出ていない。「お山の大将でした」と振り返る。高校1年から米ロサンゼルスへの単身野球留学を決意した。
渡米後は毎日午前3時まで英語の勉強漬け。聖書1ページ理解するのに4時間かかり、「野球好きの先生にひいきしてもらってなんとかやっていけた」という。
ミズーリ州のカルバーストックトンカレッジに入学し、投手に転向。野球大学リーグNAIAでサウスポーの中継ぎとして全米9位になる貢献をした。
在学中にメキシコのプロチームと契約したが、2週間で解雇を言い渡された。大学卒業後もプロ試験に挑戦したが受からず、米国でコーチを務めた後、帰国して神奈川県の強豪中学硬式野球チーム「湘南クラブ」で教えた。その後、シンガポールの野球練習施設「ザ・ヒット・ファクトリー」に務めジャカルタ店開店に合わせ赴任した。
指導する側になり「野球に関わる内容は今の方が深い。自分ができなかったことや、自分になかった環境を与えられる」と感じている。子どもの可能性を引き出せたときはプレーしていたときよりも面白い。特にインドネシアではコーチでさえ基本ができていないから教えがいがあるという。
THFでは今後、独自の野球チームを作り、海外遠征なども計画している。「楽しいが原点」。子どもに一番の近道を示し、上達の楽しさを知ってもらう。日本と米国、最先端の場所で培ってきた技術がインドネシア野球界に新しい風を吹き込むかもしれない。(堀之内健史、写真も)