クリスマス礼拝できず 支援者たちと民家で祝う 西ジャワ州ボゴール ヤスミン教会

 西ジャワ州ボゴール市にあるヤスミン教会のキリスト教徒は二十五日、厳重警備下にある教会で礼拝ができず、個人宅でクリスマスを祝った。市が治安を理由に閉鎖している同教会をめぐり、教会での日曜礼拝を懇願するキリスト教徒と、教会の違法建設を主張するイスラム団体のにらみ合いが続いている。 

 ヤスミン教会のあるボゴール市街地アブドゥラ・ビン・ヌー通りの約三キロ区間は二十五日午前六時、警官隊によって閉鎖された。歩行者は職務質問を受けなければ入ることができない。
 午前八時、クリスマスを祝おうと、キリスト教徒約百人は教会近くの通りに集まった。通りを挟み、地元イスラム団体「ムスリム・コミュニケーション・フォーラム(フォルカミ)」や「イスラム改革運動(ガリス)」のメンバーら約二百人が待ち構える。
 教会でのクリスマス礼拝を懇願するキリスト教徒に対し、警官隊は「安全のため教会での礼拝は止めてください」と通告。ボゴール市が同日、礼拝場所に別の施設を用意したという。衝突を回避するため、イスラム団体とキリスト教徒の間に警官隊が腕を組み壁を作る。フォルカミのメンバーらは「教会の使用許可は出ていない。とっとと帰れ」と罵声を浴びせた。
 フォルカミのアフマッド・イマム代表は「われわれはイスラム過激派ではない。宗教問題や人権問題ではなく、違法建設を問題視しているだけだ」と息巻いた。
 両者のにらみ合いは約一時間ほど続き、警官隊に説得されたキリスト教徒は教会での礼拝を断念。アルマンシャ・タンブナンさん(四九)は「ちゃんとしたクリスマスを過ごしたかったのに」と肩を落とした。
 立ち去るキリスト教徒を、イスラム団体のメンバーは「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」とのかけ声で見送った。「まだあそこにいるぞ」と興奮し、扇動する者の姿もみられた。
 キリスト教徒は個人宅に移動。アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領の妹や娘、同教会の支援活動を行っている人気男性歌手グレン・フレッドリーさんらとともにクリスマスを祝った。
 教会の広報担当ボナ・シガリンギン氏は「立ち退くつもりはない。ここで引き下がれば権利を放棄することになる」と話した。

◇市長が最高裁無視
 ヤスミン教会は二〇〇八年二月、イスラム団体の抗議活動が活発化したのを機に、建設途中でボゴール市が建設許可を急きょ取り下げ、封鎖された。一〇年三月には一時的に開放されたが、イスラム団体の抗議で再び封鎖。同教会のキリスト教徒は、教会前のアブドゥラ・ビン・ヌー通りの路上で日曜礼拝を行ってきたが、これにもイスラム団体が中止を訴え、市は治安維持を理由に路上礼拝の中止を命じた。このため信者の個人宅での礼拝活動を余儀なくされている。
 最高裁は教会開放を命じる判決を下したが、ディアニ・ブディアルト市長はこれを無視、再三にわたる国家オンブズマン委員会の勧告なども聞き入れず、封鎖を続けている。
 同市長は、教会がイスラム指導者の名前(アブドゥラ・ビン・ヌー師)が付けられた通りに面し、不適切だと主張。また教会建設に必要な近隣住民の署名六十のうち十人分が偽造だったとしている。
 ディアニ市長を擁立した闘争民主党(PDIP)は支持を取り下げると発表。反対にイスラム保守系の福祉正義党(PKS)が同市長への支持を表明するなど、政治問題化している。

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